超神化鉛筆コロコロール!〜転売目的でコロコロ鉛筆買ったけどうっかり本物の神様の宿ったコロコロ鉛筆を手に入れてしまったせいで神様から一緒に世界を救ってくれってせがまれた件〜
鳳菊之介
序章ー無職と神様の宿る鉛筆編。
第一転-鉛筆な神様、神様な鉛筆。
『単刀直入に言う、君に世界の危機を救って欲しいのだ』
「はい?」
今作品の(一応)主人公である俺こと海堂アラ太はまさに未知との遭遇って奴を体験していた。
先程から俺に語りかけて来る物体は人間ではない。『物体』と抽象的な表現をしたのにも意味がある。何故ならそいつは生き物と呼べる見た目でもなかったからである。
コロコロコロ。
『申し遅れた、ワシは
そう、この自称神様は鉛筆だ。
もう一度言う。今目の前でひとりでにコロコロ転がっている鉛筆は神様だ。
何故世界を救ってくれとのたまう自称神様の鉛筆と出会ってしまったのか。
それはほんの半日前にまで遡るのだった。
***
「金が入用だな……」
一身上の都合で務めていた会社を退職し、再就職先を求めて早一年。
退職金含め貯金もとうとう底を尽いた。
毎日近所のスーパーで売っている5食入りで100円の格安冷凍うどんに生卵を落としただけの味気ない食事を朝昼晩で3食。最近は節約のために昼を抜いて2食で済ませることも多いが、そんなひもじい生活を強いられている毎日だ。
家賃や生活費、社会保険料の支払いが滞り始めとうとうアパートの大家から直々に来月末まで滞納分の家賃を払えないなら出てって貰うと言われてしまい現在に至る。
金が欲しい。猛烈に。今。
まとまった金が欲しい。
「なんか俺が持っているもので売れそうなものあるかな……」
いつもお世話になっているフリマアプリで金になりそうな私物は全て手放してしまった。
私服、ゲーム、ムフフな本とDVDetc...
密かに推していた人気アイドルのグッズ。
私物を売りに売り続けてかつて娯楽に満ち溢れていたマイルームは最低限の家具だけを残して、殺風景極まりない虚無な空間となっていた。
家具も最初から備え付けの賃貸アパートだからある意味このまま出て行くには都合がいいな! あっははははは! ははは…………はぁぁぁぁ。
「誰か……俺に金を……」
働かざる者生きるべからず。
現実は厳しいものである。
「ん?」
ふと、流し目で眺めていたフリマアプリにあるあなたへのおすすめ商品の欄を見ていたら見慣れない商品が目に入った。
「コロコロ鉛筆……?」
関連ページを見てみるとおびただしい数の出品数だった。いたる所にコロコロ鉛筆の写真に次ぐ写真の数々。
どうやらフリマアプリさん曰く、ここI年で絶賛人気急上昇中のコンテンツらしい。
「えっ、マジ? コロコロ鉛筆ってそんな人気なの?」
【ブリザードファルコン 50,000円 コロコロ鉛筆 使用済み現状品】
「いっ!? 1本5万円っ!? こんなボロボロの鉛筆を買う奴が居るのかっ!?」
なんだこの消費者のいいねの数は……あっ!とかなんとか言ってる間に品切れになっちまったぞ!
【ファントムスライム 2500,000円 コロコロ鉛筆 使用済み現状品】
「今度は250万円っ!? プレミアつきすぎだろなんじゃこりゃ!?」
しかもさっきのブリブリざ○もんみたいな名前の鉛筆よりもボロボロなのに50倍も値打ちがついてやがる。
なんかこれも消費者からのいいねと反響がやべぇ……この様子ならすぐ売れそうだぞ。
なんなんだこの業界は……。コロコロ鉛筆ってあれだろ。俺が小学校くらいの時に同級生の間で流行りまくったせいで学校で持ち込み禁止令が出たりしてた鉛筆みたいなやつだろ?モンスターの絵とかHPとかの数値が入ってるやつ。
それが今こんな高額で取引されるような時代が来るとは……何という鉛筆バブルなんだ……。
インターネットを駆使しコロコロ鉛筆について調べているとさらに驚きの事実が分かった。
高額で売られていた今の鉛筆達は市販で売っているコロコロ鉛筆パック(1本500円也)にランダム封入されている激レア鉛筆らしい。
ちょちょちょ、ちょっとまって!
そんな市販で売っている商品の当たりに法外なプレミア価格が付いてるの!
これは……もう一発当てて、一獲千金しちゃうしか無くね?
生活がかかってんだ。やるったらやるぜ。
海堂アラ太28歳。無職から転売屋へのジョブチェンジである。
なけなしのお札を握りしめ、いざ荒波立つ可能性の大海へと漕ぎ出していったのだった。
***
ない……何処にも……ない。
都市圏のいたる所のお店やコンビニを覗いて見たけど、どこに言ってもコロコロ鉛筆は売り切れで再入荷の予定は無いという旨の張り紙ばかり。
どうやら俺よりも財力と行動力を持ち合わせた
「あとは……ここかぁ」
最後に立ち寄ったのは頻繁に買い出しに行く近所のスーパーだ。
俺はお店の自動ドアが開くと同時にダッシュした。
やばい……久々にダッシュしたから足つりそう……うぐごぁぁぁぁぁぁ!?
押し寄せる痛みに涙目になり、足を引きずりながら文房具コーナーを一目散に目指す男(無職)。
側からみれば完全にただの不審者である。
「ハァハァ……あったぞ!」
やっとのことでたどり着いた文房具コーナーの一角に設置された一際異彩を放つ独特な虹色のPOP。
今や時の流行玩具と化したコロコロ鉛筆のコーナーである。
最新弾のコロコロ鉛筆のランダムパックが欲しかったのだが、パッと見たところおいてあるのはランダムパック1パックとキャップや消しゴムなどの付属品とセットになったペンシリスト強化セットとかいういわゆる抱き合わせ商法的な商品だけ。
事前に調べた情報だと、どうやら鉛筆に取り付けるキャップや消しゴムの色でモンスターの装備とか特性を強化出来るようで、そういうオプション品まで揃えようとするとすごい金額がかかるらしい。
誰でも遊べる全年齢向けの競技玩具の皮を被っちゃいるが、最終的には札束の投げ合いになるというわけか。
アコギな商売するじゃねえか公式さんよぉ。
とにかく俺はペンシリストじゃなくリアリストなんでね。
こんな状況で余計な金など使っていられるか。
鉛筆が手に入ればいーんだよそれで!
最新弾の『戦国時代編』は売り切れか。弱ったなぁ。
あるのは第1弾の『創世編』が1パックのみか。渋いな……。
これも事前に調べた情報だが最新弾の鉛筆の方が全体的に相場は高めの鉛筆が多い。
理由は簡単、最新弾の方が古い弾に収録した鉛筆よりも使いやすく強い効果を持っているモンスターが多いからである。
「まぁ、仕方ないか」
こうして、俺は念願のコロコロ鉛筆と格安冷凍うどんと生卵を買って帰路に着いたのだった。
***
さてやっと家に着いたぞ。いよいよ開封だ。
手垢が鉛筆に付かないようにビニール手袋を嵌めた。
開けたら時価200万円相当の鉛筆が出るかもなんだぜ。慎重に開けなければ……。
ハサミでパックの上部に切れ込みを入れた。
中から出てきたのは青い鉛筆だった。
確か鉛筆の色はモンスターの属性を表すんだっけか。
青は水とか空に関わるモンスターの属性だったはず。
何が一番の当たりだったっけ。あぁダメだ緊張して頭が働かねぇ。
ええい!ままよ!
「コロコロールドラゴン?」
名前の欄にはコロコロールドラゴンと書かれていた。
青くデフォルメされた可愛らしいドラゴンの見た目のモンスターだ。
そうだ、こいつの相場は!
俺はすぐさま携帯を開き、コロコロ鉛筆の相場をまとめたネットサイトを開いた。
【コロコロールドラゴン 参考相場100円〜250円】
うげぇ! こいつパック一個分より安いのかよぉ……。
「くそ……これなら未開封のまま出品すりゃ良かったぜ」
あーあ、格安冷凍うどん5個分買えるところが鉛筆1本だよこれ。ホントどうすんのこれ、ねぇ。
捨てるのはもったいないし普通に鉛筆として使うかぁ。いやでも今後プレミアが付く可能性もあるか……いやないな、勘だけど。
トホホ……。
なんか無駄に一日中歩き回ったから疲れた。
うどん食べよ。今日ぐらいは生卵二つ乗せてもいいよね……?
俺はキッチンに向かい今日買ったばかりのうどんを茹で始めるのだった。
『ここは……何処だ。ワシは確か人間共によって体を切断されて……それから……』
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