第20話
「どうして」
ってソラシドは、本当に泣きそうな顔で、ぼくを見つめた
「自分で言ったじゃないか。どんな願いも叶うっていうのは……虚しいって」
ぼくたちは本当に、お互いのことを
いつだって、肝心なところで理解していないんだ
本当に薄情なやつだと、自分でも思う
彼女の抱えた虚しさを、ろくに理解もしないまま
彼女の与えた優しさを、突っぱねてしまうのだから
だけど、ぼくがどんな願いを叶えたところで
ソラシドの胸に、ぽっかり穴が空いてしまうなら
願いは虚しい、なんて呪いが
彼女の中に、残るなら
ぼくの願いなど、一生叶わないままでいい
だから「願わない」とぼくは言う
「ぼくの望みは、自分で叶える。天使になんて願うものか」
こんな当たり前のことに、どうしてもっと早く気が付けなかったんだろうなぁ
ぼくがもう少ししっかりしていれば
ソラシドが、こんなにも不器用に
一人で思い悩まなくて済んだかもしれないのに
最初のお願いが無くたって、ぼくは
ずっとソラシドの傍にいられたらいい、なんて
たったそれだけのことなのに、随分と遠回りをしてしまったなぁ
だけどもう、迷わない
ぼくの望みは、たった一つしかないのだから
天使の耳を塞ぐ手に、力を込めて
少しずつ、一つずつ
言葉になれば、それでいい
「ソラシドの言うとおり、僕たちはこれから長い時間をかけて――なにかになっていくんだろう」
天使にお願いするんじゃなくて
自分が望むなにかに向かって
これからは、自分の足で、歩くのだろう
そういう風に生きると、決めたのだから
お願いをやめるっていうのは、そういうことだと思うから
最後にたった一つ、何年も
輝き続けるような思い出なんて要らないから、だから
「そうやって、なにかに向かって進みながら……数え切れないくらいの思い出を、ひとつずつ、少しづつ、積み重ねていけたら、それでいいんだ」
それがぼくの、たった一つの望みだから――なんて言葉が
まさか、自分の口から出るとは思わなかったけれど
その時、ソラシドの綺麗な瞳から
零れて、伝う光が、ぽろぽろと
「バカだなぁ」と
ソラシドは、その時ようやく
夕焼けみたいに眩しく、笑ってくれたから
ぼくとしては、それでよかった
ソラシドが笑ってくれて
本当に、よかったと思った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます