エピローグ とある十年後の昼下がり

 ――それ以来、私の天使は忽然こつぜん


 どこかに姿を消してしまった


 一体どこに消えたのか


 はたまた最初から、そんなものなどいなかったのか


 まるで小さい頃にしか見えない幻想のように


 あるいは思春期の子供にしか使えない魔法だったかのように


 だけど、天使に捧げた二つ目の「お願い」は


 今もまだ、叶ったままで


 だから私は今日もソラシドだ


 だけどいい加減に、苗字がないのも


 なんだか物足りなくなってきた


 ――時間が経って、大人になって


 私たちはになれたのかもしれないし


 まだを目指している途中なのかもしれない


 それはまだ、分からない


 けれど、そろそろ


 苗字のある名前に戻ってもいいのかもしれない


(――なんて言ったら君は、驚くかなぁ)


 そんなことを思いながら、私は


 君との待ち合わせ時間を、こんな風に楽しんでいるのでした



 ――どんな願いも叶える天使がいたことは


 もう、二人だけの秘密だけれど



 私には、まだ


 君に言えない秘密を、ひとつだけ


 こっそりと、隠したままでいるのです。



 終

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ソラシド 神崎 ひなた @kannzakihinata

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