第18話

 どんな願いも叶う人


 なんて、まるで想像のつかない領域に


 少しだけ踏み込んでみようと思う


 ソラシドがそうしたように


 どこまでもにぶいい藍色をたたえた夜空を見上げて、考える


 十二年間もの時間を費やして


 あらゆる願いを叶えてきた、少女のことを


 いつしか笑わなくなった少女のことを


 虚しいものだよ、とソラシドは言った


 そんなうつろを一つだけ、ぼくに預けて


 それで終わりにしようと思った彼女のことを


 考えても、考えても


 願いを手放す気持ちが、ぼくには分からなかった


 けれどそういう不器用なところを


 ぼくはきっと放っておけないのだろうし


 ソラシドが、たった一人の幼なじみという


 ただ、それだけの事実は


 これからも、ずっと変わらないのだから


 つまりそういうことなんだろうなぁ


 ぼくのなりたいものとか、やりたいことなんて


 もうずっと前から決まっていて


 もうずっと前から、なにも変わっていないのだ

 

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