(四)‐4(終)
自宅に戻ると、リビングはすっかり元に戻っていた。違うのは他に置く場所がなくてダイニングテーブルの上に骨壺が置かれていることであった。
そしてリビングに入ってきた俺を出迎えたのは、あのアブドラだった。抱きしめられてアラビア語なまりの日本語でお悔やみの挨拶をされた。そしてまたもや驚くべき事を聞いた。
「妹さんから聞きマシタ。借金については安心してクダサイ。我が国の王室が全て肩代わりシマス」
そう話すと、外交ナンバーの大型セダンに乗ってアブドラは帰っていった。母は泣いていた。骨壺の前で。「いい人もいるのね」と。「お父さん、ありがとう」とも。そして骨壺を挟んで母と妹に、桂瀬さんの話をした。彼女は誤解を招くことを言ったが、肉体関係があったわけではなく、家族のように愛されていて、生活費を父が出していたということを伝えた。
母はこの日ずっと泣いていた。妹も泣いていた。
軽蔑していたわけではないが、尊敬していたわけではない父の一面を知った。俺は父が世界一凄い人だと思った。心の底から自慢できる素晴らしい父であったと。そうして、俺は新幹線で神戸に戻った。
(了)
父の答え 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi
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