(三)‐3

 お別れの儀が終わり、お棺に蓋がされ出棺となった。家の前に霊柩車が到着していた。アブドラが乗ってきていた外交官ナンバーの車は霊柩車が通るには邪魔になるので、少しどいてもらっていた。俺と母、妹、そして葬儀社の人がお棺を持ち上げた。そこにアブドラも加わった。

 お棺が車に納められると、小ヶ田社長の手で霊柩車のハッチがバタムと閉じられた。すると車の隣に桂瀬親子が立っているのが見えた。

「えっ? 何でいまここに?」

 思わず俺は声を出してしまった。まさか父の不倫相手がこんなところにいるなんて。しかもこれから火葬場にいくところなのに。そして母は半狂乱となった。


(続く)

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