(三)‐2

 小ヶ田葬儀社の人が、余った花を急いで棺桶に入れているところであった。アラビアの人が部屋の中に入ってきて「こちらは合川さんのおたくですか」とアラビア語なまりの日本語で言った。

 俺が名前を尋ねるとアブドラ・アッラシードと名乗った。アブドラはアラビア半島にある小王国の王子で、数年前に日本に留学していたのだそうだ。そして留学中縁があって、父がお世話をしたらしい。

 アブドラは日本語が堪能なため、現在は東京の大使館に勤めているのだそうだ。つい先月赴任したばかりだそうだが、昨日父の訃報を聞き、今日駆けつけたというわけだった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る