(二)‐8

 疲れ切った脳みそは、悪い現実に直面して思考がブラックアウトしていた。俺は携帯電話を耳に当てながらしばらくその場で動けなかったらしい。携帯電話が妹の声で俺のことを連呼していることに気づいた。

「お兄ちゃん、大丈夫?」と携帯電話は妹の声で俺の耳元にささやいてきた。何がどう大丈夫なのかすら自分でもわからないまま、俺は「ああ、大丈夫だ」とだけ携帯電話に声をかけた。

 病院の入口脇にあるロータリーで客待ちのタクシーに乗り込み、俺は実家へと向かった。


(続く)

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