(二)‐7

 一応念のため、妹に携帯電話で連絡をとった。母でも良かったが、父が無事ならきっと今頃なにかおいしい物でも作ると行って買い物に出ているかもしれない。万が一そうでなかった場合はきっと狼狽したままだろう。だから、比較的冷静な妹に電話をした。

 電話越しの妹の声は元気がないどころか、すすり泣くような声だった。妹は「お兄ちゃん」と発語した後、しばらく言葉を詰まらせて、数秒の沈黙があった。

 俺はその沈黙で悟った。父は亡くなったのだと。退院というのは、病気が回復してではなく、亡くなったから、というわけだ。なるほど、病院の窓口の事務員の口調は素っ気なかったのはそういうことだったのだ。しかも、嘘は言っていなかった。


(続く)

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