(二)‐6

 父が搬送された病院に俺が到着した時にはすでに一一時となっていた。既に父は亡くなっていた。しかも父が生前に懇意にしていた葬儀会社の人が来て、遺体を実家に運んでもらった後だった。

 そんなことはつゆ知らず、俺が病院の玄関を入ってすぐのところにある窓口で、入院患者の照会をしてもらったところ「既に退院されました」との言葉をもらい、俺は安堵した。働き過ぎと寝不足で少し腫れ気味のように感じる脳みそが、少し緩んだ気がした。父が倒れて入院したというのに、翌日にもう退院ということは、父が倒れたのは大したことがなかった、と推測したのだ。


(続く)

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