(二)‐5

 新神戸から東京まで乗車した始発の新幹線「のぞみ」号の車内での約三時間は、非常に長かった。父は無事なのか、もう亡くなったのか、どういう症状なのか、軽いのか重いのか、もしも無事でなかった場合はどうするか、もしも生きてケロッとしているようならなんて言ってやろうか、などといったことが、次々とリフレインしながら頭の中を駆け巡った。

 自分に「落ち着け」と言い聞かせながら、「状況は行けばわかる」と理性では理解しながらも、脳みそを構成するシナプスはそんな冷静なことなど全部無視して糖分を消費し続けた。もちろんこれは新幹線の中だけではなく、神戸の自宅で寝る前からそうだった。結局眠りにつくことが出来ずに朝を迎え、支度をして家を出てきた。そんな睡眠不足の状況も手伝い、脳みそがいつも以上に働いていた。


(続く)

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