誕生日
七瀬モカᕱ⑅ᕱ
誕生日
日差しの眩しさで目を覚ます。今日も暑い.......いつにも増して、体が重たい。
きっとそれは暑さのせいだけではなくて.....。
「もうこんなに経ったんだ......。」
今日は、大切な人の誕生日。そして一年で一番嫌いな日でもある。
「よし......。」
ゆっくりと重い体を起こす、今日は忙しくなる。こんなところでグズグズしていたらあっという間に一日が終わってしまう、それに......今年は笑顔で過ごすって決めているのだから。
私はまず、花屋さんに寄った。
「ひまわりでお願いします。」
これがあの人への誕生日プレゼント、ひまわりはあの人が一番好きな花だから毎年変わらずひまわりをプレゼントしている。
「あっつ.......」
外があまりにも暑かったから途中のコンビニでアイスを買って少しの休憩、こんなに暑いのに子供たちがわーわーはしゃいている。
「元気だねぇ......」
私にもこんな頃があったな、なんて思いながら私はあと少しの道のりを急いだ。
✱✱✱
「遅くなってごめんね、はい......お誕生日おめでとう........。」
今、私がいるのは...小さな河川敷。
あの人はというと..........もう、ここには居ない。
「もう十年だって、早いね........。」
私は一人で喋り続ける、きっとこの声はもう届かないと分かっているけれど。
「なんで.....なんでっ、私なんかさ........」
十年前の誕生日、私が川に行きたいなんて言い出さなかったらあの人は......兄は今も、ここに居たはずなのに.....。
『元気だしな。』
ふと、兄の声が聞こえたきがした。
もちろん振り返っても誰もいないけれど、確かに声がした。
「.........うん。」
私は涙を拭う。空の上からでもあの人にはお見通しなんだな、なんて思うと自然と笑顔になった。
「ありがと.....そろそろ行かなきゃ、また来るね。」
私は笑顔で河川敷に背を向けた。
誕生日 七瀬モカᕱ⑅ᕱ @CloveR072
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