第128話 小林泉という男⑤
おそらくは、ここにいるスタッフ全員が忙しい僕に代わってこの「あゆみちゃんプロジェクト」に関わってくれていたのであろう。
見渡したオフィスのスタッフの目が赤く輝いているのが見える。
「沢山の善意を頂いて彼女を救えました。」
堪え切れずにボトリと流れた涙が、菅ちゃんの想いの深さを物語っていた。
「先生の講演料を、沢山使わせて頂きました。」
唐突に小林泉は、そしてはっきりと、金の話を口にした。
菅ちゃんが善意と置き換えた金の話を、彼は迷う事無く僕に話した。
「有難うございます。僕らでは到底救う事の出来ない命でした。」
真っ赤な目をしている菅ちゃんとは対照的に、まるでたった今テニスの試合でもしてきた様な清々しい彼の姿に僕は小さな異和感を覚えた。しかし一方で、彼のこの言葉がその時の僕の気持を救ってくれたのもまた事実だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます