第126話 小林泉という男③
「小林と申します。」
差し出された名刺を受取りながら、私は彼の、その視線に押される様に目を伏せた。
“嫌な感じだな。”
正直な気持ちだった。
“この男が菅ちゃんの言う男なのか?”
彼をめぐってこれからひと波乱ありそうな…そんな直感にも似た予感が、彼に対する警戒をより強くした。
彼の一度目の訪問は、ただ僕への挨拶だけで終わり、わずか10分足らずで彼はオフィスを後にした。
その後僕と彼との接点は全くなかったが、菅ちゃんからの話で、菅ちゃんが仕事以外でも彼との付き合いを深めている事を知った。
この出会いは僕の心に強烈に焼きついた。何だろう…。今、冷静に思い返せば(とてもおかしな話だが)「もしかすると僕とこの男は前世(もしそういうものがあるならば)でも出会っていたのかもしれない」
…これが一番正しい表現なのかもしれない。
真冬の寒い日だった。野外撮影を予定していた僕は、その日の雲の具合が僕のイメージとどうしてもあわず、その日の撮影を急きょ取りやめた。
「ポウをオフィスに預けたままだった。」
自宅へと帰るタクシーの中で急に思い出し、行き先をオフィスへと変えてもらった。
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