第113話 運命②
目の前にイエスキリストが、悲しみと苦しみをおびた表情のままはりつけになり、小さく頭を下げている。
ずいぶん昔にキリスト教の信者である友人から「イエス様は罪深い我々人間の、全ての罪と悲しみと苦しみを背負って神の元へと戻られた」と聞いた事があったが、目の前の彼の姿を見た途端、まさにその通りなのではないかと思い、僕はその姿から目を離せずにいた。
「あなたの御心にそったこの出会いに感謝いたします。」
シスターはキリストに頭を下げると、静かに腰を下ろした。
「私たちは、この世界に起こりえる事すべてを、神が決められ、そうあるべきだと定められた事だと受け入れ、その全てに感謝して祈り、またその本当の意味を見つけようと日々生活しております。」
キリストに顔を向けたまま、控え目に彼女は言葉を続けた。
「正直に申し上げて、私にはここにいるたくさんの子供達が、なぜ、最も愛されるべき時期を、最も愛されなければならない両親からの愛を受けずにここにこうしていなければならないのかわからない時もあります。…それでも、その全ては神様の御心に沿った事なのです。」
静かに目を閉じたまま、彼女はまるで、懺悔でもしているかの様に僕に話しかけた。
「三船愛斗君と言います。彼が私共の所へ来た経緯は、先だってお送りした手紙に書かせていただきましたが、実は手紙には書けなかったもう一つの事実がありました。」
彼女は静かに座り直すと、僕の方に向かい会いこう言った。
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