第108話 手紙②
この手紙では、名前は伏せさせて頂く事と致します。この子が先生の事を知るきっかけとなりましたのは、ある方から先生の写真集を寄贈して頂いたのがご縁でした。
日頃より当園を様々な面でご支援して頂いている方が、ある日先生の写真集を3冊寄贈して下さいました。その中の1冊を目にした途端、今までに一度も笑顔を見せる事がなかったその子が、私たちに初めて笑顔を見せてくれました。
「この本、僕がもらってもいいですか?」
この言葉を耳にした時、私共がどれだけ神に感謝した事か…。言葉で言い表わす事はできません。この子は2歳の時、当園の前でうずくまっているのを、通りがかった人が見つけて下さいました。12月も末の大変寒い時期に、真っ暗な中たった一人で、泣く事もなく、半そでのまま、ただただぶるぶると震えている所を発見されました。手には小さなメモが一枚。彼の名前と生年月日のみが書かれていました。私達が彼と生活を共にして以来、彼から進んで誰かに話をするという事はありませんでした。そして、その彼が、初めて自分から進んで発した言葉が、「この本が欲しい」でした。
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