第107話 手紙①

「突然のお手紙失礼致します。」

 真っ白な封筒に十字架の押印が入った封筒が僕の手元に届いたのは、街の飾りにようやく雪も積もり始めた去年の12月20日の事だった。それは、首都圏のある町にある小さな養護施設から送られて来たものだった。


 「突然のお手紙失礼致します。私は養護施設「地の塩」の代表を務めさせて頂いております飯島と申します。

私どもは、様々な事情により居場所がなくなってしまった子供達の為に、神の御加護の元、子供達を守り育てる養護施設を運営させて頂いております。

 本日この様な形で先生に手紙を書かせて頂きましたのは、私どもが毎年行いますクリスマスの行事での出来事を、是非先生に知って頂く為でございます。一方的で大変申し訳ないと思いつつ手紙を書かせて頂く事をどうかお許し下さいませ。

 「地の塩」では、毎年クリスマスイヴに、「愛する誰かの為」に祈りを込めて手紙を書く事になっています。ここにいる子供達は、多かれ少なかれ、心や身体に傷を持った子供達ばかりです。クリスマスイヴに書く手紙を通して、近くにいる誰かを愛し、また自分自身も神や周りの人々によって愛されているのだと気づく、いわば子供達のカウンセリングを兼ねたものでもあります。

 通常は同じ部屋に住む友達や、又日頃お世話をしてくれる上級生、もしくはボランティアの方々あてに日頃の感謝と、その人たちの幸せを祈る手紙を書くのです。そして、皆がそれぞれに手紙を渡し、後日それぞれが手紙を返すといった事を長年行って参りました。

毎年の事ですので、子供達が書く手紙の相手は、養護施設内の子供達や、もしくはそれに関わって頂いている方のみであると私自身考えておりましたが、実は先生あてに手紙を書いた男の子がおりました。

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