第100話 今日という日⑥

 「エイトナインは、いつでもいつまでも、君の居場所だ。もし、エイトナインが真奈美の居場所になり得なかったとしたら…、僕には、この会社を存続していく意味はない。」

 

 菅ちゃんは真奈美を見つめて、一言一言、ゆっくりと語りかけた。そして、はっきりと

真奈美の心に想いを埋め込んだ。

 「真奈美を他へは行かせない。エイトナインが君を守り抜くんだ」と…。


 いつの間にか真奈美のあの瞳からは、寂しげな色が消えうせていた。

 うっすらと涙で濡れた真奈美の長いまつ毛を見ながら、僕は、僕が真奈美に恋をしていた事を知り、又、今日その恋に破れた事を知った。

 「彼女の過去を、心を、本当の意味で清らかに安らかにしてくれる男を探したい。」 

 僕は心底そう思った。

 「人は愛する者の為にのみ生きていける」

 どこかで聞いた言葉を、僕は何度も、心のなかで繰り返していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る