第99話 今日という日⑤

その日真奈美は、泣いて泣いて全てを話した。僕たちは何言う事もなく、ただ真奈美の話に耳を傾けた。


 「もう、話す事も、そしてもうこれ以上

涙も出ません。」

 話し終えた真奈美は、本当にすっきりとした顔で、そして僕たちを見るとクスリと笑ってみせた。

 「涙って、こんなにも流せるものなんですね。一リットルくらい流したかしら?」

 その物言いが、可愛くて、おかしくて僕ら3人も、クスリと笑った。

 「社長。達夫君の宿泊先はまだですよね?もし達夫君さえ良かったら、是非うちに泊まって下さい。」

 そしていつもの、輝くばかりの笑顔を見せた。

 「そうだなぁ…。しかし…。」

 菅ちゃんはしばらく考え込んでいたが、

 「今日は二人にとって、…というか、僕たちにとっても、あまりにたくさんの事が起こりすぎた。そこで…、どうだろう?僕の知り合いにホテルのオーナーがいる。彼に頼んで、数部屋続きのコネクティングルームを取ろうじゃないか。そうすれば、話したい時に話したい相手と話せて、眠りたい時は別の部屋で眠ればいい。もし急に人恋しくなったとしても、僕らは全員同じ部屋にいる。いつでも同じ所にいるんだ。」

 真奈美も達夫も、子供の様な顔で嬉しそうに頷いた。

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