第76話 秘められた過去①

「すぐる君ね?いや~、久しぶりね~、元気にしとったぁ?」

 数回のコール音の後、元気な由香里の声が響いた。

 「久しぶりやな。元気やったか?」

 「元気も元気よ。お陰様で、色んな意味で、やっと普通の生活ば取り戻しよる。菅原社長はお元気ね?ほんに、色々とお世話になりっぱなしで…。」

 話を続けようとする由香里を遮って僕は話を切り出した。 

 「由香里、ここに達夫君が来ている。」

 「えっ?」

 状況が飲み込めないでいる由香里に、僕はここで起きた全てを話した。

 「達夫君が、どうしてもご両親には話して欲しくないって言うけん、悪いが由香里に連絡してみた。このまま帰して良かとはとても思えんけんね。どうしたもんかと思って…。」

 由香里はほんの少し考えていた様だったが、

 「わかった。これから少しだけ用事を済ませてからすぐにそっちに行くけん。それまで、悪かばってん、達ちゃんばよろしくね。」

 そう言うと一方的に電話が切れた。 

 「これから由香里がこっちに来るそうだ。」

 うな垂れたままの達夫に伝えた。

 僕は静かに受話器を置いた。


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