第75話 心の闇⑤
「僕はもう、本当に大丈夫です。彼女が帰ってきたら…、彼女が病院から戻って来たら、お詫びを言って僕は九州に帰ります。どうか、
このまま、どうかこのまま僕を九州に帰して下さい。」
泣きじゃくりながら僕と菅ちゃんを交互に見ると、床に両手をついて頭を下げた。
「君の気持もわからないではないが、今の君は普通ではない。君が考えている以上に君は疲れてしまっている。悪いが、君を一人で帰らせる訳にはいかない。」
菅ちゃんがきっぱりと言い切った。
達夫は「あぁ…」と小さく呟くとそのまま床に顔をうずめた。
「ご両親に話すのがどうしても嫌だというのなら由香里に話すまでだ。」
僕は冷たく言い放った。
「でも、それは…。」
達夫は、固く目を閉じたまま、次の言葉も探せないでいた。
「いいか君、甘えるんじゃない。君には君の事情があったに違いない。だがしかし、君は、一人の人間に怪我をさせてしまった。しかも全く関係のない人間をだ。そしてそれは、まぎれもない事実だ。そんな大変な事をしておきながら、その責任を取らないというのは、いや、その責任を取る入り口にも立たないというのは、それは君の甘え以外の何物でもない。」
僕は達夫の手を取り、ソファーに座らせた。
「これから由香里に全てを話す。」
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