第65話 予兆②
「又写真家志望の子かな?悪いが、僕はいないと言って帰ってもらってくれないか?」
僕の名前が世の中に出るにつれ、写真家志望の若い子供達が、度々僕を訪ねる様になっていた。ほとんどの子が弟子入りを希望してきたが、僕にはその一人一人の将来に責任を持てる自信もなかったし、又、その能力もないと思っていた。人様の大切な娘さんや息子さんを、簡単においそれと預かる事などとてもできやしない。僕の意見に同意した菅ちゃんは、洋子以来、飛び込みの誰とも会わない事に決めていた。そして、その子達の応対をするのは、いつの間にか真奈美の役目になっていた。真奈美は、その子達の夢を壊さない様、又、希望を失わない様、上手に話をして彼らを帰していた。
僕の言葉を聞いて、いつもならオフィスへと戻りそうなものだが、今日は勝手が違い真奈美はまだもじもじとそこに立っている。
「何か気になる事でもあるのか?」
「いぇ…。そういう訳でもないのですが…。先生に会う為だけに、はるばる九州から来て、その足でここに向かったというものですから…。それに…」
真奈美がこう言う話し方をする時は、彼女が何か気にかかっている時だ。そして暗に、僕に彼と会って欲しいと言っていると直感した。
「分かった。通しなさい。」
真奈美は黙って頭を下げた。
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