第62話 嵐の前の静けさ④
「そりゃお前、おせっかいだって。頼まれてもいないのにでしゃばるなよ!」
その言葉にはっとして顔を上げると、窓際に立って大声で電話をしている若い男の声だった。
「何でも出来っと思うから、こんな事になるんだぜ。」
その途端、電車のドアが開いて、男は人の波に流されながらホームへと消えて行った。
「彼らが望むなら、その全てにおいて僕には彼らを守り通す責任があります。」
あの時の菅ちゃんの言葉がよみがえった。
「そうだ。“彼らが望むなら”だ。」
菅ちゃん程の男だ。何か考えがあっての事に違いない。待ってみよう。もし彼が望むなら彼は僕に相談してくるだろう。そしてその時は、僕は命に代えても彼らを守り通してみせる。
僕は携帯をポケットにしまうと、駅に降り立つ準備を始めた。
「あら、もう御戻りですか?先生、パーティはいかがでした?」
僕の顔を見た途端、真奈美が不思議そうな顔をした。
「あぁ、何となく調子が悪くてな。途中で引き返してきたよ。」
そう言うと自分のオフィスのドアを閉めた。
そうだった。例の件で、パーティに呼ばれていた事をすっかり忘れていたのだ。
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