第42話 仲人①

それから2ヶ月あまりたったある日、菅ちゃんと洋子が二人して僕のデスクに来た。


 「先生、僕達今年の8月に結婚しようと思います。監督の事がありましたから本当は来年まで待とうと思っていたのですが…。でも、少しでも早い方が、きっと監督は喜んで下さると思いますから。」

 「そうか、そうか。とうとう決めたか。」

 僕は喜びを隠し切れなかった。

 「幸せになれよ。」

 僕の言葉を聞くなり、ニヤリと笑って、菅ちゃんが切り出した。

 「それで、それについて先生には折り入ってお願いしたい事があるのですが。ついては僕達の仲人をお願いしたいと思いまして…。」

 「仲人?俺は独り身なのに、か?」

 訝しぶる僕に菅ちゃんは、

 「いらっしゃるじゃないですか、長年の連れ添いが…。」

 と言うと楽しそうに大声で笑った。

 

 そしてその年の8月のある日、僕は彼らの思わく通り仲人席に座っていた。僕の隣にはポウが静かに座っている。

 「こんなのありか?」とも思ってもみたが、これが意外にもしっくりといっていて、というよりかはこの形しかなかったかの様にぴったりと納まっていて、招待客の面々は僕とポウの仲人をとても面白がっていた。

 招待客は菅ちゃんの付き合いの広さを誇るように400人を超えた。僕のまん前の円卓には、小野瀬会長と雪野真奈美が並んで座って楽しそうに笑っている。

小野瀬会長は、日本中の、というか世界中の人が知っている日本で有数の自動車メーカーの会長である。と同時に政財界にも名の通った人物で、4,5年程前から、時々僕の写真集のスポンサーとして力を貸して頂いていた。そしてある事件をきっかけに、彼は全面的な僕の、というか、オフィスエイトナインのスポンサーとなった。

彼はもともと、特定の人と個人的な付き合いをするのを好まず、今までどんな大物といわれる人物の結婚式にも参列した事はなかった。その彼が初めて参列した結婚式が菅ちゃんの結婚式である事には、雪野真奈美の存在があったからにほかならない。これについては、どうしても語っておかなければなるまい。


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