第9話
「え、イチゴ、もしかしてあのウサギしか倒していないの!?」
「え? お姉さまはそういう意味で言ったんじゃありませんの?」
「い、いや最初はウサギがちょうどいいんじゃないかと思って言ったのよ。ただ、普通は自分が強くなったら相手も変えるものよ? まあ、イチゴはゲーム初心者だから私がちゃんと説明しなかったのが悪いわね。ごめんねイチゴ」
「そ、そ、そんなことないですわっ! お姉さまがいませんとまともにゲームもできない私が悪いんですわ!」
「ふふふっ、そんなことないわよ。ただまあ、ウサギちゃんをひたすら倒したおかげで面白い称号をもらってるわね。ホーンラビットの天敵? どんな効果なのかしら」
「えーと、効果は……俊足というスキルを獲得するのですわ。これって、どうなんですの??」
「おー、凄いわね! こんな早くに俊足を持ってる人はなかなかいないわよ? 俊足は多くの人が持ってるくらい便利スキルだからちょうど良かったわね。イチゴの勘違いのおかげで思わぬ成長を遂げたわ、ふふっ面白いわね」
「お、面白くはないですわっ! 私は至って真剣ですわよ?」
「ふふふっ、そうよね、ごめんなさいね。可愛いくて、つい」
そう言ってお姉さまは私の頭を撫でてくれたの。本当に優しくて素敵な方だわ。心の底から尊敬できるし、憧れるわ。
「よし、イチゴも予想外の方法だけど強くなったことだし、東の森のボス戦目指して進んでみましょうか」
でも、お姉さまが急にそんなことを言いましたの。
「え!? でもボスって強いんじゃないですの? 私まだまだ始めたばっかりですわよ?」
「ふふふっ、確かにそうよね。でもまあ私がいるから大丈夫よ。それに、いろんなモンスターや強敵と実戦で戦うことが一番の近道だからね、イチゴにもその感覚を味わって欲しいの。ここは手軽に限界に挑めるし、限界突破もできる世界だからね。それを使わない手はないわ、存分に楽しみましょう」
やっぱり、流石はお姉さまですわ。考え方が一味も二味も違うんですのね。私がお姉さまと同じ年になってもこんな考え方できる気がしませんわ。やはり、特別ですわね。
「はい、分かりましたわ! 私はお姉さまに一生ついていきますわ!」
「ふふふっ、ありがとう。とっても嬉しいわ。では、早速いきましょう」
「はい! ですわっ!」
❇︎
東の森を奥へ奥へと進んでいくと、見たこともないモンスターが沢山現れてきましたわ。青色のスライム、赤色のスライム、現実よりも少し大きめのイノシシ、更に更に奥では狼なんてものもいましたわ。
この世界は可愛いウサギちゃんだけじゃないってことが身に染みて分かりましたわ。それに、モンスターが違えばその行動パターンも大きく変わりますの。最初は全然慣れなくて上手くいきませんでしたわ。
でも、お姉さまの助言を頂き、ずっと繰り返しているうちになんとか戦えるくらいにはなってきましたの。
「レベルアップしました」
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