第13話

(今日はどんなお手伝いをしようかな?)


学校が終わり、友達と一緒に帰りながらそんなことを思った。


(そうだ、みんな、お家でどんなお手伝いをしているのだろう?)


ちょっと気になったので、聞いてみることにした。


「私は食べ終わったら食器を台所に持って行くよ」


「私は、特にお手伝いはしていないよ」


と、2人が答えた。


そして最後の1人は

「私はお父さんにいつも抱きついてるの。朝と夜には、行ってらっしゃいとおやすみのチューをしてるの。お母さんが立派なお手伝いだって言っていたよ」と答えた。


「おやすみのチュー??」

私たちはびっくりした。


お父さんは、そのチューでとてつもなく喜んでいるそうだ。


(へぇー)


そういえば、私のお父さんはどこにいるのだろう。


生まれた時から、すでに居なかったようだ。


ずっとお父さんの存在は意識したことがなくて、よく分からなかった。


私にとって、祖父が父代わりだったのだ。


そんな、「チュー」のお手伝いの話をしていたら家の前に着いていた。


「また、明日ね!」


私は友達と別れて、家に入った。


私はさっそく祖母に

「何が出来ることはある?」

と、話をした。


祖母は

「そうだねぇ...。アレをやってもらおうか!」と、外に導いた。


外には祖母が育てている植物の鉢が幾つか置いてあった。


「この植木鉢に水をあげてちょうだい」と祖母は私にじょうろを渡した。


子供用の小さなじょうろ。


きっと今日を見越して、用意してくれていたのだろう。


「あまり水をやりすぎないように気をつけてね」


そう言うと、祖母はお手本を見せてくれた。


(なるほど)


私は理解した。


祖母からじょうろを受け取り、1鉢ずつ水をあげていく。


どれも見たことのない花だ。


今度祖母に花の名前を聞いてみようと思った。


そんな中、黄色い花が目についた。


見覚えのあった花だ。


あっ、タンポポだ!」

理科の教科書にも出ていた花だ。


黄色い花の隣には白いワタのようになっていた。


(このワタは確か...タンポポの種だったよね。吹くと飛んで行くって先生が言っていたのを思い出した)


私はタンポポ目掛けて、「フゥー」と息を吹きかけた。


タンポポのワタは勢いよく飛び立った。


「わぁ!凄い!」


四方に飛び散った、タンポポのワタ。


理科の実験が出来たみたいで楽しかった。



アリが列をなして歩いている光景も目にした。


どうやってアリが一列で歩けるのがが不思議だった。


植物に水をあげるお手伝いから、理科の勉強に早変わりした。


あの時のワクワクした気持ち、今でも覚えている。


大切な思い出の一つだ。

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