第9話
夕方17時ころ
私は目を覚ました。
話声が聞こえる。
聞き慣れた声。
おばあちゃんだ!
祖母は無事に帰って来た。
両手いっぱいにお土産を持って。
「ただいま。心配かけてしまったね。ごめんね」と私の姿を見て話しかけてくれた。
私は無言で祖母に近づき、抱きついた。
声が出なかったけど、ポロポロと涙した。
祖母は私を抱っこしてくれ、ゆすりながら慰めてくれた。
今回、祖母が泊まっていたホテルは火事になった。
泊まっていた人の殆どが外出していて無事だったそうだ。
部屋にいた人もホテルの従業員の指示で速やかに避難して全員無事だったそうだ。
ただ、ホテルの電話が使えなくなり、連絡出来なかったそうだ。
電話ボックスも旅行先で見つからなかったそうだ。
(おばあちゃんが無事で良かった)
祖母はたくさんお土産をくれた。
どれも嬉しいものばかりだった。
でも、私にとって1番のお土産は祖母が無事に帰って来たことだった。
夕食後、誰も見ていない時に台所で静かに祖父が立っていた。
みんなが使った食器を洗っていた。
日頃はそんなことをしない祖父なのに...
何か、嬉しそうな表情をしていた。
私と祖父が折った鶴がリビングに置いてあった。
祖母がご飯を食べる時に座っている席に。
きっと祖父が置いたのだろう。
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