グロトリアンのピアノ

増田朋美

グロトリアンのピアノ

グロトリアンのピアノ

その日は、とても暑い日だった。エアコンは必需品だ。しかし、暦の上では、二、三日たつと立秋になってしまう。今年の夏は、とても梅雨が長すぎて、大暑というものがなく、もう終わってしまうのかという、天気予報がどこのチャンネルでも流れている。それでは、おかしなものが流行っても無理はないという専門家も少なからずいる。

そんな中でも杉ちゃんと蘭は、いつもと変わらずのんびりと暮らしていた。いつも通り、買い物へ行って、いつも通り、食事をして、何も変わらずに生活していたのである。

今日も、杉ちゃんと蘭が、いつも通り食事をしていると、インターフォンがピンポーンと音を立ててなった。

「あれれ、今頃誰だろう。」

と、蘭が言うと、

「すみません、杉ちゃんいますか?ちょっとお尋ねしたいことが在るんですが。」

と、声がする。声はマーシーの声だった。

「あれれ、こんな時にマーシーが?」

と蘭が言うと、本当にいいんでしょうかという、女性の声も聞こえてくる。

「はあ、誰か門下生でも連れてきたか。ああ、暑いから中に入れ。」

と杉ちゃんが言うと、ガチャンとドアが開いて、マーシーと、一人の若い女性が、部屋の中に入って来た。二人とも大量に汗をかいて、Tシャツが水をかぶったように濡れていた。

「おう、一寸待ってくれ。いまお茶だすからな。まあ、そこに座って、ゆっくりしてろや。」

と、杉ちゃんが、お茶を入れに台所に行くと、

「お尋ねしたいことってなんだ?」

と蘭がマーシーに聞いた。

「ああ、お前に頼みがある。素人判断でいいから、お前の好きなピアノメーカーを言ってみてくれ。ただし、アップライトピアノより、グランドピアノが得意な方をな。」

マーシーは変な質問をした。一体どういうことだと蘭が言うと、

「こちらの女性、野田すえ子さんという方なんだけどね。彼女が、グランドピアノを欲しがっているのだけど、ピアノメーカーが決まらないんだ。どこのメーカーにしようかという話をすると躊躇する。だから、お前にも手伝ってほしいというわけ。」

とマーシーが言った。

「ずっと電子ピアノで練習していたんだけど、それでは曲のほうが追い付かなくなってね。いつまでも、電子ピアノで練習するには勿体なさすぎる。だから、それでは思い切って、グランドピアノを買ったらいいと提案したんだ。」

「おお、なるほどね。グランドいいな。確かに、ベートーベンのソナタくらい弾きこなせるようになれば、電子ピアノでは物足りないな。僕の意見では、最高峰はステインウェイ、アンドサンズだけど。」

と、杉ちゃんが言った。

「ちょっと待てまて、あれは高級すぎて、とても手に入らないよ、中古でも、一般庶民には買えないんじゃないのか。まあ、腐っても鯛というけどさ。それでも500万はするだろうし、、、。」

と蘭が急いで杉ちゃんに言うと、

「わかっている。ピアノのメーカー何て、星の数ほどあるもんだ。もちろん海外メーカーだって、安いのから高いものまであるじゃないか。それを一つひとつあげていこう。」

と、杉ちゃんは言った。

「そうはいっても一番入手しやすいのはヤマハだから、それが一番いいのではないの?」

と蘭が言うと、マーシーが

「いや、ヤマハがすべていいわけじゃない。それに今は、ヨーロッパのたくさんのメーカーを入手できる時代なんだし、選んだ方がいいよ。今はヤマハよりもっといいメーカーはたくさんあるんだから、多少かかっても、いいものを買った方がいい。」

といった。

「おう、マーシーの気持ちわかる。確かにいろんなメーカーのピアノがあるもんな。ベーゼンドルファーにベヒシュタイン、あとは、そうだな、プファイファーとか?」

杉ちゃんは、海外の有名なピアノメーカーを次々に並べた。そんなピアノメーカーをよく知っているな、と、蘭は関心というよりあきれてしまうのだった。

「一寸、あんまり知られていない、マニアックなピアノメーカーだけど、アポロとか、グロトリアンもあるよねえ。」

杉ちゃんがそういった。グロトリアン。水穂が日常的に愛用しているメーカーだ。確かドイツで演奏したときに、グロトリアンの取締役から譲ってもらったというが、そのいきさつはどうだったのだろう。本当に親切心から、ピアノをもらったのだろうか。其れとも、強制的に買わされたのだろうか。

「どうしたの蘭。急に黙りこくっちゃって。」

と、杉ちゃんに言われて、蘭は、あ、いや、一寸考えごとをしていただけだよ、といった。

「いや、そうじゃなくて、僕がグロトリアンと言ったら、急に渋い顔になるんだもん、どうしたの?」

「グロトリアンか。杉ちゃんが、それを知っているとはびっくりしたな。あれ、本当にマニアじゃないと買わないピアノメーカーだよ。ステインウェイと会社名の命名権争って、敗北して以来、表沙汰には出なくなったもの。」

と、マーシーが言った。確かにマーシーの言う通りなのだ。元々グロトリアンという会社は、ステインウェイを創始した人物の、師匠と言える人が設置した会社であった。ドイツ語ではステインウェイと書いてシュタインウェイグと読むのだが、どちらもシュタインウェイグという会社名をつけてしまい、どちらが正当か、命名権をめぐって、両会社が裁判で争ったことがある。勝利したのは、ステインウェイを創立した人物であり、グロトリアン社は敗北した。結果として、ステインウェイは、世界的にトップクラスのピアノメーカーに成長するが、グロトリアンは必要な人にだけ、ピアノを生産する、とても小さな会社になってしまった。

「でも、ステインウェイの師匠が始めたピアノメーカーだから、音がいいのは確かだぜ。だから、ステインウェイが欲しくても、ブランド代が払えないからグロトリアンで代用する人もいる。」

と、杉ちゃんが言う。なんで杉ちゃんはそういうことを知っているんだと、蘭は思わず杉ちゃんの方を見た。

「杉ちゃん、それ、誰に聞いたの?」

と、思わず蘭が聞くと、

「だから、水穂さんに聞いただよ。そういうピアノメーカーだって聞いた。しっかり教えてもらったから、それを復唱しただけだよ。」

と、杉ちゃんはカラカラと笑った。

「まあ、日本ではあまり知られてないが、海外メーカーに初めて触れたい人はグロトリアンというメーカーもいいかもしれないよね。ほかのメーカーは、湿気に弱いとか、音に癖があるとか、いろいろあるみたいだぜ。」

「そうだね、杉ちゃんがまさか、グロトリアンを知っているとは思わなかった。でもグロトリアンは確かに安定した音が出るという。ステインウェイの簡略版としか評価されていないようだけど、意外にいいかもしれないな。」

とマーシーは、杉ちゃんのいうことに、同調した。

「一寸調べてみる。」

マーシーは、ファブレットを出した。グロトリアン販売と、検索欄に入れて、実行のボタンを押してみる。蘭は、この静岡では、そんなマニアックなピアノを売っているところなどないのではないかと思ったが、以外に中古ピアノを譲りたいという人物の投稿があった。それにはしっかりとメーカーはグロトリアンと書いてある。

「よし、ここでちょっと交渉してみましょうか。まあ、すでに売約済みかもしれないが、そうなったらまた探せばいいだけの事さ。」

杉ちゃんがそういうと、マーシーもそうだねといった。投稿者の住所は富士市内ではなく、やや遠方の長泉町からだった。

「そうですか、譲ってくださるんなら、私も頑張って練習します。」

野田すえ子さんは、マーシーが見せた画面を眺めながら、そういうことを言っている。

「そうですか。中古品ですけど、一応グロトリアンのグランドで、家庭用の最小サイズということですね。長年使っていないため出品します、ですか。」

なるほど、ピアノも、そうやってフリーマーケットに出品されるようになったのか、と蘭はなんだかそのピアノがかわいそうだと思うようになった。野田さんにとっては、いい買い物なのかもしれないが、なんだかこういう風に簡単に譲られてしまうのも、複雑な気持である。

「よし、問い合わせてみましょうか。」

と、マーシーと、野田さんはそういうことを言っている。運搬はこうしようとか、調律も必要かなとか、そういうことを話しあっている。最後に調律したのはかなり昔だと投稿画面に書かれているが、調律をあっせんしてくれる会社は僕が探しますから、とマーシーは言った。

「よし、じゃあ、今週の木曜に、ピアノが搬送されてくるようです。よかったですね。グロトリアンのピアノが入手できるなんて。」

「今回は、本当にいい買い物だな。ピアノ線が切れているわけでなし、調律すればまた弾けるさ。」

マーシーと杉ちゃんは、そういうことを言い合っている。やっぱり一人で考えるより、二人で考えた方が早い、そういうのに、悪いものが流行っている時世だろうが何だろうが、関係ないと二人は話している。蘭は、一寸、違和感があった。グロトリアンというピアノを、そんな風に簡単に手放してもいいのだろうか。グロトリアンなんて、めったに入手できないものが、今はボタン一つで簡単に入手できるようになっている。そんな世の中になって、豊かな世の中になったものだ。ほんと、これ以上何か求めてしまったら、もう地球のありとあらゆることが、できるようになってしまうのではないかと思ってしまうほど、今の世の中は便利なものだ。見知らぬ人から、何かいただいたり売ってもらうこともあり得る世の中である。もう店というものもなくなってしまうかもしれない。

「良し、配送業者は、僕が頼んでおきましたから、野田さんは、代金の支払いの計画だけ立ててくれればそれでいいですからね。」

「グランドピアノデビューできてよかったなあ。」

杉ちゃんとマーシーがそういうことを言っている中、蘭は野田さんが、うれしいのか悲しいのか、どちらとも取れない、複雑な表情をしているのに気が付いた。もし、本当に欲しいのなら、手放しで喜んでもいいはずだ。ピアノを買うというのはそういう事だから。でも、彼女はそういう顔でもなかった。

「あの、外出ましょうか。」

と、蘭は、彼女に静かに話しかける。杉ちゃんとマーシーは、相変わらずピアノの運搬のことで出品者と話があるらしく、まだ落ち着くには時間がかかりそうである。だから、その間、彼女に話を聞こうと思ったのである。彼女も、ええそうですね、とすぐそれに応じた。蘭は、エアコンのよく効いた部屋から出るのをいやだとも思わないで、車いすを動かし、部屋の外へ出た。

「あの、野田すえ子さんとおっしゃってましたよね。」

と、蘭は、一緒に出てきた野田すえ子さんを見る。

「どうして、マーシー、いや高野正志さんにピアノが欲しいと相談したんですか?」

「あ、あの、高野先生は、あたしのことを励ますつもりなんです。」

と、すえ子さんは言った。

「励ます?ピアノを買うことがですか?」

と蘭が言うと、

「ええ。私、若いころ、音楽学校志していたんです。」

と、彼女は答えた。その答えにえっという響きがあった。だって彼女の顔つきを見るとどうみても30代くらいだと思うのだが、若いころという言い方をする以上、中年の女性のはずである。

「ああ、ああ、すみません。私、52ですよ。あなたよりもっと年上です。もちろん高野先生よりも。」

という彼女。蘭は思わずびっくりしてしまった。とても52歳には見えなかった。それはものすごく美人というわけではない。彼女は美人というより、幼いと言った方がよかった。そういうわけで、52歳という年齢は信じられないのだ。

「そうなんですか。じゃあ、音楽の経験はあるわけですか。」

「ええ、高校生の時に、急に音楽学校へ行きたくなって、音楽学校の先生に土下座してお願いして、レッスンしてもらっていたんです。」

蘭が聞くと彼女は静かに答えた。

「でも、私は、音楽高校に成績が悪くていけませんでした。だから高校で、音楽学校なんて行くものではないと、担任教師の先生に何回も怒鳴られました。それが嫌になって、二人の先生についたりもしたんですけど、先生がたがお互い敵同士だったから、音大に入学した時それがばれて、すごい叱られて、もう精神がダメになってしまって、9年近く入院してました。出られたのは、病院が建て替え工事をしたからです。それがなかったら私、一生精神病院の中でしたわ。」

「そうだったんですか。」

それでは、マーシーが、ピアノを買うのに力を入れているのも、なんだかわかる気がした。

「でも、それでは、ピアノを弾くのは苦痛というか、つらいでしょう。ほかの人は、みんな音楽学校に何の問題もなく入れたのに、自分は、精神病院に入院を強いられたなんて、自分の人生が嫌になったりしませんか?」

と、蘭は、そういうことを言った。きっと彼女は、そう感じているはずだ。

「ええ、確かにそういう事もありましたけど、今は、もう長く入院して忘れてしまいました。何だか、出てきた後、いろんなものが変わっていて、まるで浦島太郎でしたわ。もう仕事もできないし、何か趣味を持つこともできません。三年前にやっと、ピアノが弾けるようになったんですよ。それで、インターネットで高野先生の事を聞いて、習わせてもらっているだけなんです。」

彼女は、自分の身の上をそう語った。

「あの、マーシーは、あなたがそういう身の上になったということは知っているんですか?」

蘭が聞くと、

「ええ、入門してすぐ高野先生に話しましたから、それは快く承諾してくれました。そして私をピアノサークルにも参加させてくれて、サークルの人たちも、みんな傷ついている人たちで、私はやっと望んだものを手に入れることができたみたい。」

と彼女は答える。

「使っていたピアノは、一度処分したんです。それで、部屋に何もなかった時期もあったんですけど、ピアノを習いだして、安物の電子ピアノ買って。でも最近高野先生が、本物のピアノをもう一度買いなおそうって言ってくれて、そういう格安で中古品を譲ってくださるサイトを紹介してくれたんです。それで私、ピアノメーカーがこんなにたくさんある事を知りました。私は、ヤマハとかカワイくらいしか知らなかったので。」

「そうだったんですか。」

と蘭は言った。

「じゃあ、グロトリアンというピアノメーカーも、まったく知らないわけですか。」

「ええ、正直に言うと、存在すら知らなかったんです。そんなピアノメーカーがあるなんて、さっきの着物の方がおっしゃってくれるまで何も知りませんでしたわ。まあ確かに、ベーゼンドルファーとか、ベヒシュタインは、聞いたことありましたけど。」

「そうなんですか。じゃあ、マーシーの気持ちに応えてやってくれますか。マーシーは、傷ついたあなたを慰めるために、そういうことをしているんだと思います。そうやって格安で譲ってくれるサイトですから、たいして良いものが入手できるかはわからないし、何回も修理してもらわなければだめだと思います。でも、マーシーはきっと、あなたに生きていて欲しいと思うから。それにこたえてやってくれませんかね。」

そういう返事を返す彼女に、蘭はそうにこやかに言った。

「はい、そうですね、と言いたいところですけど、あたしは、もう病院に九年も入院していたし、ヘルプマークも取ってしまったし、もう障碍者です。そんなあたしに、そういうことが、できるんでしょうかね。私なんて、何になるんだろう。もう、生きていく手段もないし。唯一ピアノだけが、外へ出るきっかけになっているだけですよ。もう、おわりになってしまうというか、人生はおしまいになっちゃったような気がするんです。」

と、すえ子さんは、一寸首を下げて、小さい声で言った。

「何だか何のとりえもない地球のゴミみたいな人間で、こんな人間に、ピアノなんか弾いてもいいのかなあと思ってしまいます。」

「いや、生きているんですもの。地球のゴミなんかじゃありませんよ。そんな風に考えるなんて、まるで自分の人生を粗末にしてしまっているようなものですね。それではいけない。」

蘭は、そういうことを言ったすえ子さんに、戒めるように言った。

「どうしてですか?あたしは、何もとりえもないし、生きていても意味がない人間ですよ。なんで、こんな風に生きているんだろうって、いつも考えているの。仕事もないし、利益も作れないし、ほら、どこかで障碍者施設の人が殺害された事件がありましたよね。あれって、私たちから見ても、間違いじゃないなって、それを思ってしまう事もあるんです。そういう社会になっているんじゃないかって、テレビの報道とか見ると、そう感じてしまいます。」

「そうですか。確かに表面上はそういう風に見えますよね。そっちの方が正しいと信じ込んでいる人のほうが確かに多いかもしれない。」

と、蘭は、彼女に言った。

「だからこそ、というとおかしいですけど、自分を大切にしてもらいたいです。あなたは、ほかにもう一つあなたがいるわけじゃないんですから。」

「そうかしら、あたしの代わりに何かできる人はいっぱいいるんじゃないかしら。」

彼女は、蘭に向かってそういうことを言った。

「入院したことない人はそういうわ。でもね、一度この世の中から切り離されると、二度と帰ってくることはできなくなるのよ。」

「できなくたって、いいじゃありませんか。」

蘭は、水穂さんのことを思い出しながら、思わず言った。

「たとえば、僕の親友であるグロトリアンのピアノの所有者は、もう何年も床に伏しているけれど、それでもまだ、生きてほしいから、治療を受けているんです。まあ、どんな薬飲んでも効かないで、困っているみたいですけど。」

「ああ、生きたくても生きられない人がいるんだからとか、そういうお話は、何回もききました。それは、私の心には響きません。私は、そういうお説教は求めていないんです。其れよりも、」

「いやいや、最後まで聞いてくれ!」

と、蘭は、思わず強く言った。確かに精神障害者にとって、自分の話に説教されるほどいやなことはないが、蘭は話をつづけたかった。

「すみません、感情的になったりして。でもそいつは、生きていれば必ず、ひどいバッシングに会うことでしょう。なぜならそいつは、同和地区というところに生まれたばかりに、汚いだとか、臭いだとか言われて、生きていること全部を否定されているような男です。でも、彼には、僕は生きていてほしいと思うんですよ。だって、彼を床に臥すように陥れたのは僕ですから、、、。人間には、地球のゴミ何ていませんよ。そういう風に必ずどこかにつながりがあるんです。だからもしかしたら、あなたの人生を滅茶苦茶にした人も、そういうつらさをもって生きているかもしれませんよ。そういう人のためにも、そして、あなたを、一生懸命鼓舞しようとしているマーシーのためにも、生きてやってくれますか。一寸変な言い方になりますが、僕からのお願いだと思ってください。ひとからお願いをされるなんて、ほとんどないでしょうから、その一つだと思ってくだされば。」

すえ子さんの表情は硬いままだったが、蘭は彼女に届いただろうなとおもった。

「おーい、蘭。どこへ行っちまったんだ?あの、運送会社に話しはついたぜ。全くよ、便利な世の中になったな。出品者の方も、ぜひお譲りしたいといってくれた。今はこうやって、弱い奴にも優しい社会になったもんだぜ。まあ、グロトリアンのピアノ、大事に使ってなということだった。」

がちゃんとドアが開いて、杉ちゃんが顔を出した。すえ子さんは、本当にそうなったんだと、驚きを隠せない顔でいる。蘭は、その驚きで、きっと彼女は、また生きる気力を取り戻してくれるのではないか、とそっとため息をついたのだった。

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