第7話

さくらさんの両親と、僕の母とは、旧知の仲なので親しげに話をしている。

父とも、顔見知りのようだ。


さくらさんが、僕たち家族へ依頼はこうだった。


≪たくさんの人を運ぶので、列車、銀河鉄道ね。それを使うわ。

○○くんには、その運転士になってほしい≫

「免許ない」

≪大丈夫。鉄道模型を動かすのと同じだから≫


安直な・・・


6両編成の列車を3編成用意して、死者の魂を乗せる。

それを、僕たち3人に運転してくれというのだ。


「みなさんは、何をするの?」

≪駅についたら、そこがあの世への入り口。そこから、私たちが、閻魔さまのところまで誘うの≫


理解出来ないが、理解するまでの時間はなく、大型地震が僕の町を襲い、多数の死者が出た。

町は廃墟と化した。

当たり前だが、犬や猫、鳥なども、たくさん死んだ。


生存者は、ほぼいなかった。

当然、僕たち家族も犠牲者に含まれる。


しかし、その前に魂を器から抜け出していたので、苦痛はなかった。


これだけの数を運ぶとなると、列車3本では足りない。

なので、何往復かする事となる。


そしてそれは、今も続いている。

何だか、切ない・・・


・・・くん、○○くん。


。。。あれ?ここは・・・


「久しぶりだね。○○くん」

「さくらさん?」

「覚えていてくれたんだね。私の名前」

「ここは?」

「夢の中だよ。君のね・・・」


さくらさん。

モンシロチョウに憧れていた女の子。


ただ、ある日突然、世を去った。


「○○くん、覚えてる?モンシロチョウの話」

「うん」

「今、君が見た夢は、ひとつの世界」

「世界?」

「うん。運命は決まっている。でも未来は決まっていない」


さくらさんはえらく真剣だ。


「私が、モンシロチョウとなって君の周りを舞っていたのは、君に伝えたいことがあって・・・」

「伝えたい事?」

「うん。君は自分の未来を悲観的にしか、考えていないわ。それを具現化したのが、今君が見た世界」

「じゃあ・・・」


さくらさんは、モンシロチョウへと姿を変えた。


「私は、もうしばらくこの姿で、君の事を見守る」

「どうして?」


その意味がわかるのは、かなり先だった。


数年後。


一冊の本を出した。


題は《モンシロチョウからのメッセージ》


さくらさんへの、捧ぐ本だ。


その本の上に、一頭のモンシロチョウが、羽を休めている。

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