第6話

「僕が妖精?聞いたことないけど」

両親は何も言っていない。


≪正確には、君は人間と妖精の、ハーフ。≫

「ハーフ?」

≪君のお父さんは人間だけど、お母さんは妖精なんだ≫


母が妖精?


≪うん≫

「まさか、リャナンシーだなんて、言わないよね」

≪ビンゴ≫


リャナンシーなんかい!


「でも、リャナンシーって・・・」

≪そう。彼女は愛する男性の前にしか、その姿を見せない≫

「でも、その男性は早死にするんじゃ・・・」

≪その男性がひとりならね≫

「ひとりなら」


さくらさんは、頷いた。


≪彼女は、君のお父さんと恋に落ちて、子供が生まれた。それが君≫

「僕?」

≪意味合いは違うけど、君のお父さんと君は、彼女にとって愛する存在。だから二分された≫


ご都合主義だな・・・


≪で、話を戻すけど、君も半分は妖精だから、死者の魂をあの世へと引率してもらうわ≫

「引率って・・・」

≪とにかくお願い。君のご両親も知っているから≫


僕は両親に、その話をした。

即答で、その通りと言った。


否定することなく。


リャナンシー。

愛された男性は、その命と引き換えに、後世に残る作品を残せる。

そして、そのリャナンシーは、とても美しい。


父は、ベストセラーとまでは行かないが、数多くの作品を残している作家。

母は、確かに美人ではあるが、超がつくほどではない。


美貌でないと、その威力も半減するのか・・・


いいかげんなものだ。


「どうして言わなかったの?」

そう尋ねると、「訊かなかったから」と答えた両親。


つっこみは、やめておいた。


翌日、僕たち家族は、さくらさんの家を訪問した。

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