4,情報収集・作戦会議

 夏休みが明け、放課後、俺らはいつもの会議室に集合していた。俺は新たな気持ちで部活に臨もうとしていた。

「じゃあ夏休みにきた依頼について話し合いたいと思う。」と俺が言った後に菜々が手を挙げた。

「どうした菜々?」と俺は聞くと、菜々はカバンからメモ帳を取り出ししゃべり始めた。

「夏休み中に布袋くんのことを友達にあたってみたんだけど、詳しいことが分かったよ。私たちの高校って3回停学をもらったら退学なんだけど、彼は2回、停学をもらっている。彼が退学についてどう思っているかは知らないけど、母親は退学はしてほしくはないと思っているみたい。そして…」

「母親の気持ちは分かったんだけど、父親はどう思っているんだ?」萩一が話を割って聞いた。

「言い忘れてたんだけど、彼は母子家庭なんだよね。だからお母さんは布袋くんのために働いて通わせているわけだし、何とか卒業だけはしてほしいと思っているわけ。それで話を戻すけど、彼は極度の女嫌いらしいよ。停学の理由も女子に手をあげたとか。でも女嫌いの理由は分からなかったな。」と菜々はひと通りに調べたことを話してくれた。

「ありがとう。菜々にもう1つ聞きたいことがある。彼が文化祭を荒らすという根拠は、調べた中で何かあったか?」今度は俺が疑問に思ったことを聞いた。

この質問に対し菜々は「これはあくまで推測なんだけど、たしか彼は去年の文化祭で2回目の停学をもらったんだよね。だから今年も何か起こすんじゃないかって心配した誰かが依頼をくれたのではないかな。」と答えた。

「なるほどね。他に何か情報持ってる人いるかな?どんな小さいことでもいいから。」俺は菜々以外にも尋ねた。

「小さいことだけど、布袋がいつも後輩を2、3人連れている所をよく見かけたよ。あと古い用具室を溜まり場にしてたな。」と萩一は思い出しながら答えた。

「用具室って体育館横のもう使われてない建物だよね。そこに何か手がかりがあるかもしれないな。布袋たちがいない時間を見計らって調べてみるか。」俺はみんなに提案した。

「正直、きついと思うよ。確か、彼らが用具室を離れる時に入り口にチェーンかけて誰も入れないようにしてたから。あ、でも裏口に扉があるから先生に鍵を借りれば入れるんじゃないかな。」と萩一は思い出しながら返答した。

「なるほどね。今度、先生に頼んでみる。だいぶ菜々のおかげで情報が集まったし、あとは彼が荒らすという前提で、それをどう阻止するかだな。何か意見はないかな?」俺は皆に意見を求めた。

しかしなかなか案はあがらない。沈黙が続く中、

「布袋くんに直談判しにいく。とか…。」菜々が自信なさげに答えた。

しかし「僕たちが直接言っても、聞いてくれる相手じゃないよ。」と萩一はとっさに否定した。

「じゃあ萩一くんは何か意見あるの?」と菜々は萩一に意見を求める。

それに対し悩みながら、「文化祭や準備期間中、彼を陰から先生に見張っててもらうとかかな。」と萩一も自信なさげに答えた。

「まだ荒らすとも分からないのに、先生に頼んでも動いてくれないでしょ。」と今度は菜々が萩一の意見を否定した。

「部長は意見ないの?」今度は萩一が俺にパスをしてきた。

「えっと今の話を聞いた上で考えがあるんだけど、実際にやるとしたら難しいかな…。えっと…。」俺は考えた作戦をみんなに話した。

「うーん。その意見、成功するかは置いといて、もっと計画さえしっかり立てればありなんじゃないかな。」と萩一にはこの意見は好印象だ。

「すごい方法だけど、成功すれば万屋部のことを、みんなに知ってもらえそう。賛成かな。」と菜々も俺の意見にのってくれた。

「うん。良いと思うよ。」

部活のみんなが俺の考えた作戦に賛成してくれ、何だか嬉しかった。

部活の後半、俺の考えた意見についてもっとみんなで話し合った。大まかなコンセプトはこうだ。

『この依頼を利用し、部員を集める。』これを軸として本格的に周りを固めていく。

ざっと説明すると、俺の通う高校には秋に文化祭がある。そこで部活の出しものとして、依頼にそったドキュメント風映画を撮影する。文化祭当日、その映像を流し、周りからの反響を集め、みんなに万屋部を知ってもらう。これが俺の考えた作戦だ。あの布袋くんが万屋部と絡んだことを周りに知ってもらえば、学校で万屋部が評判になると考えたからだ。

しかしこの作戦には色々な不備や問題がある。俺たちは1週間ほどかけて作戦をねった。頭脳派の萩一のおかげもあり、作戦内容はスムーズにほぼ完成に近づいていった。

俺は部活のみんなが一生懸命に依頼に励む姿を見て、『部活を残したい。』との気持ちはみんな一緒なんだなと感じた。正直、不安なことはたくさんあるけど、万屋部ならいけると信じ、俺は文化祭にかけようと思う。




 

 


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