第12怪 見えない場所
人は勝手なもので目にしたものを大方信じるに値すると思う傾向がある。
目にする事は科学的、論理的だから等々、さして賢くもない普通の頭の人ですら
その辺の考えは届いているらしくそう思うようだ。
目にする事。
信じるに値すること、自分の目の前で自分の肉眼で目視した事。
であれば、テレビ映像、ビデオ映像、インターネット報道、SNSそれら全ては
信じるに値しない。
身近の隣人の話はその人を見下す心があるのか、結構懐疑的に対応する人が多い。
それがテレビ等々の経路を辿ると何故か信用する。
テレビ等々はズルく、最後は〝と言う意見もあります〟、〝関係筋によれば〟と言い訳付き。
じゃ、それ等を除くと目にする事はあまりにも少ない。
目の前で笑顔を振りまく君でさえ、僕の見えない所ではどうのような顔なの。
見たい!
見たい!
僕の見えない所の君を!
喫茶店で君と向き合うテーブルの下で僕は手の平を自分に向け、指を少し内側に曲げる。
折曲がった指の関節の皺が全て目玉に見える。
目玉は凝視するとギョロリと動いている。
そのままで僕ま目を閉じて瞑想する。
今しがた、トイレに席を立った君に意識を飛ばす。
君は便座の蓋を閉めたまま座り、ポケットから綺麗に折り畳んだイチゴ柄の飴の包み紙を嬉しそうに見つめている。
それは彼女と初めて待ち合わせたその日に僕が渡した いちごみるく飴の包み紙。
トイレから戻ってきた彼女に感謝を込めて優しい声で「おかえり」と声をかける。
見えない所を信用できない心がたまに出てくる僕はそうではない事もあるんだ!
見る必要がない信頼もあるんだ!
と、自分に言い聞かせる。
あの聖夜に得た百目の能力を使わないで大丈夫な今の彼女に感謝する。
この小さな世界。
僕は護りたい。
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