第4怪 人知れず君を想う Byふぁーぷる

 僕はこの駅が好き。


 それは毎日君に会えるからだよ。


 初めて見かけたのは君が中学生の時だったね。


 はにかみながら君はお母様に連れられて中学校の入学式に

 向かうところだった。


 純白の生地にライトブルの縁取り線が三本の爽やかなセーラ服。


 太陽を直視した様に眩しくて眩しくて目が眩んだ。


 毎日駅の中で君を見つけては一喜一憂。


 そして君は大人の女性と成ったね。


 この駅は田舎の小さな市の表玄関。


 朝夕は乗降客で賑わうけど、終電間際は寂しい。


 気をつけて欲しい。


 大人の君は仕事に一生懸命でいつも終電。


 ホームには誰も居ないし、改札も無人の自動改札になる。


 君は若くて美しい。


 毎日、こんな感じだとアイツに見つかる!


 お願いだから見つかる前に早く帰る生活にしてよ。


 線路沿いにアイツが来たらもうお終いだ…。



 秋が過ぎ裏寒い冬が来る頃。


 終電を降りた君は寄りに寄ってホームのベンチに座ってスマートフォン

 で会話を始めた。


 自動改札だから改札はいつまでも開いてるからゆっくりとホームに居残

 る君は…。


 大馬鹿だ!!


 アイツがもう後ろに立ってるじゃないか。


 <ヒクヒク>と引きつり笑いして立っている。


 躊躇なく手に持っている石割りハンマーを君の頭の真横に振り抜く。


 <ガコーン>

 <プシュ>


 それが生きている最後の君が発した最後の音。



 でも僕は嬉しい。


 君の頭から飛び出した眼球が僕が居るホーム脇のお地蔵さんの祠に

 飛び込んできたのだから。


 ようこそ、愛しいマドンナ。


 これからはずっと一緒だよ。


 翌朝は大騒ぎだった。


 女性の飛び込み事件だと。


 深夜走る貨物列車に飛び込んだ模様だと鉄道警察は推理した様だ。


 僕の時と同じだ。


 細切れの君からは他殺かどうかの証拠なんて見つからない。


 ただ、君には一つ慣れなきゃいけないことがある。


 駅のボランティアおじいさんがお地蔵さんの祠に花を飾るときに

 悪夢が蘇る事に慣れて欲しい。

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