第3怪 見てはいけない者 Byふぁーぷる

 1ヶ月に一回の事務所出勤日。


 私はお洒落して出勤する。


 今日のポイントは涼やかなワンピース。


 デザイン部門のチームミーティングも午前中に終わったけど、

 久し振りに会う皆んなと近寄らずなコミュニケーションで気分

 も晴れやか。


 話も尽きないし。


 当然、皆んな着飾っている。


 自宅で一人ファッションショーをやっても物足りない。


 本来誰かに見て貰うことで悦を得る訳だから〜。


 皆んな気合い入っている。


 気がつくともうこんな時間、終電近い時間。


 あ〜また華やかな小鳥たちは暗い鳥籠に帰宅するのね。


 事務所からバス経由で博多駅まで行き、鹿児島本線で上り、

 香椎駅で支線に乗り換え二駅目の鳥籠に帰る。


 コロナだけど月初なので人は多い。


 まだ梅雨明けしないじっとり空気の中、夏マスクして博多駅。


 しろ屋の練乳パンをふと思い出し、頑張る女子のご褒美に

 どうしても食べたくなって駅コンコースに立ち寄る。


 あー並んでる行列…。


 明日から鳥籠。


 間隔開けて行列に加わる。


 これじゃ本当に終電コース。


 頑張る女子のご褒美、褒美これも仕方なし〜。


 3個入り1セット、2セット購入。


 薄いプラスティック容器に3個並んでる。


 カワイイ!


 ビニール袋に入れてもらって<カサカサ>鳴らせながら

 駅ホームへと急ぐ。


 香椎駅での支線乗り換えは最終電車確定。


 少し走ったから息が苦しい。


 お洒落のヒールで足が痛い。


 夏マスクの中はじっとり。


 空気もじっとり。


 鹿児島本線の悶々とする電車の中、我慢我慢で香椎駅に到着。


 香椎駅では40分待ち合わせ。


 ホームは改札から一番遠い4番線ホーム。


 痛い!ヒールの足に豆出来てる。


 まだ40分あるけど4番ホームのベンチで待とう。


 終電だから誰も居ない。


 連絡通路歩いて階段降りてベンチを探す。


 あ〜、コロナでベンチも減らされてる。


 ホームの一番先に二つ並んで設置されてる。


 痛いけどあそこまで歩こう。


 やはり誰も居ない。


 どかっと座ってヒール脱いで足を楽にする。


 街灯が少ないのか少し薄暗い。


 風もなくてじっとり空気が纏わり付く。


 <チカチカ、チカ>街灯の蛍光灯が音を出す。


 階段側を向くと、煌々と明るい。


 光を見つめてベンチに目を移すと尚更暗さが増す。


 お洒落のワンピーも汗でぴったり張り付いた感じ。


 スマホだから時計してないから、バッグからスマホ出して

 時間を確認する。


 まだ5分しか経っていない…。


 久しぶりの歩きで疲れた…。


 少し眠たくなる。


 ウトウト睡魔が襲う襲う襲う…。



 <コロコロ コロ>


 <コロコロ   コロ>


 <コロコロ コロ>


 あ〜、秋の音色だ〜そうもう秋なんだ。


 コオロギ?


 虫の音色で暑さが和らぐな〜。


 と、目が覚める。


 いけない睡魔に意識を連れて行かれてた。


 えーと、梅雨明けまだだよね。


 何で、何で、虫の音色…。


 <コロコロ コロ>


 <コロコロ   コロチュ>


 <コロコロ コロチチチ>


 ベンチの横から虫の音。


 いやこれは虫の音色じゃない!


 <ばっ!>っと横を見る。


 うああ〜あ〜


 …



「ほらー! おっさん!」


 そこには半分白目をヒクヒクさせながら


 <コロコロ コロ>


 <コロコロ   コロチュ>


 <コロコロ コロチチチ>


 と口を尖らせて虫の擬音に勤しむおっさんがいた。


 しかも<チチチ>って鳥も入ってるし!

 いい加減はやめて!

 しかも白目半開きでヒクヒク痙攣してるし。

 何なのよ、もう!


「ほらー! おっさん!」


 〜○〜

 油断したら理不尽は訪れる。

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