第2話 鳥籠のツインテール

あまりにも唐突に近寄られて電源ケーブルを引き抜いたが、画面は一瞬だけ落ちて元に戻った。

少し不満そうな女の子は口をムッとして見つめてきた。

「excuse me ?please do not shutdown 」

英語で話しかけてくるがネイティブ過ぎて英語2の俺には単語が理解できなかった。

すると画面にlanguageの文字が現れてプルダウンメニューから日本語を選択した。

「マスター、突然ケーブルを引き抜くのはやめてください、頭がおかしくなりそうです、ほら現に言語が英語になってしまいましたよ」

可愛い声で優しく怒っていた。

「何で、、、」

問題はケーブルを引き抜いたのに電源が落ちなかった事だが、疑問そうに見つめていると、、、

「マスター?忘れましたか?UPSを積んでますよ、私だって、そんなにバカではありません」

「マスターって呼ぶのは身分を作ってるみたいでやめてほしい」

ボソボソと呟くと女の子は笑顔で「承りました」と返事をした。

誰かが作ったプログラムで完全に遊ばれている、最初はそのように考えていた。

「ご主人様?恥ずかしながら、私はご主人様のお名前を承知しておりませんので、お手隙の際にどうかご教示ください」

今度は妙に遜って、まるでメイドのように話しかけてくる。

キーボードを使って名前を打ち込むと返事が返ってきた。

「ありがとうございます、高野たかの様と呼ばせてください」

読み方を間違えたが、何食わぬ顔で話を進めた。

「ご主人様、私は読唇術を理解しています、このカメラでご主人様の口の動きを読み取っています」

勝手に録画マークが点いたり消えたりしながら質問攻めにあったが、呼び方は変わらなかった。

「ご主人様のご趣味は、、、どのような嗜みをされているのでしょうか?」

しばらく考えたが嗜みと呼べるものは無く、その場しのぎで答えた。

「旅行かな」

すると女の子は目を輝かせて話しかけてきた。

「ご主人様、私もご一緒させていただけないでしょうか?」

市販品でも大きなフルタワーケースの1.5倍のサイズ、受注生産品の特別なケースのため持ち歩くのは無理がある。

ボーッと考えていると

「ご主人様?スマートフォンをお持ちですか?」

2年間使っていた画面の割れたスマートフォンを取り出した。

「ご主人様、そちらに入ってもよろしいでしょうか?」

空き容量が少なくて12GBしか無い。

「悪い、空き容量が無くて無理かも」

少し残念そうな顔を30秒ほどした後に突然閃いたように画面の外に消えた。

「ご主人様、お待たせ致しました、ただ今、即興でアプリを作りました、こちらをインストールしてください、容量は侵食致しません」

笑顔で勧めてくるが、少しだけ躊躇った。

「で、パソコンはつけっぱなしと?」

気がついたように、今度は座り込んだ。

「大丈夫か?」

声を掛けると、泣きそうな顔で見上げきた。

「私がこんなんだから、、、どこにも行けなくて、淡々とUEFIの下で働いて、、、」

クールな顔して意外にも感情的という女の子は、不満を吐露すると画面をフェードアウトにして勝手にシャットダウンしやがった。

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