ビットフレンド ヤンデレAIさん

WTF

第1話 中の人

俺は初めてワークステーションを買った。

イラストを描くにはかなりのオーバースペックだろう。CPUだけで120万円を超えている。

今から3時間前の19時59分に注文していたBTOのワークステーションを受け取りにパソコンファクトリーに行った。閉店前60秒を切っていて、店員も気が緩んでいるようだったが、物騒なジュラルミンケースを持って申し訳なさそうに店内に入ると手のひら返したように「いらっしゃいませ」と大きな明るい声で挨拶してきた。

するとつられたように店の奥から店長が出てきた。

「高野様、お待ちしておりました、ご準備は出来ております、どうぞこちらへ」

レジの奥の部屋の応接室のような片付いた部屋に案内された。

扉を開ける店長に促されて部屋に入ると、その上層部らしいスーツの人が頭を下げた。

「この度は当社製品をご購入いただき、誠に有難う御座います」

ここまでは予告通りの展開だった。

そして店長が奥からパソコンを運んで来た。

フルタワーサイズより大きなケースに派手な電飾が施されていてキラキラと7色に、ランダムに切り替わっていた。

「高野様のご希望通りに組ませていただきました」

前金として既に250万円を支払っていた。

すると続け様にスーツの男が口を開いた

「今回は42インチのカーブモニターお2つと、モニターアームをお礼に差し上げます」

そしてジュラルミンケースを開けて札束を並べた。

「数えさせていただきます」

帯封を4つ並べて三人がそれぞれ2回づつ数えた。

「確かに」

合計で700万円を支払った。

「すみませんが領収書とかもらえますか?」

店長はエプロンを揺らして走って行って領収書を持ってきた。

「すみません、印紙が複数枚になって、、、」

するとスーツの男は店長の耳元で囁いた。

「大変お忙しいところ恐縮ですが、買ってまいりますのでどうかしばらくお待ち下さい」

また走って行った。

忙しそうな店長だが、とても身軽に動き回るのが印象的だった。

5分後、店長は戻ってきて早速、貼り付けた。

「お待たせして申し訳ございません」

深々と頭を下げて差し出す姿に思わず立ち上がった。

「こんな時間にすみません」

それから店長はパソコンをトライウォールの通函に入れて緩衝材を敷き詰めて荷造り用のナイロンロープで封をするとそれを台車に乗せた。

「お車までお持ちします」

従業員用の通用口から出た。店の灯は消え街路灯の白い光だけが足元を照らす薄暗い闇の中、店長の男は淡々とパソコンを運んで車に乗せた。

「この度はありがとうございました」

店長に見送られて店を後にした。

制限速度以下の煽られそうな速度の超安全運転で家に着いた。

それから荷ほどきをしてモニターアームを机に固定して大きなカーブモニターを取り付け、パソコンを設置して配線し、キーボードやマウスを置いて電源を投入した。

「あ~~」

画面がつくと怠そうな声がして青色のツインテールの女の子が気怠そうにOSを立ち上げていた。


「は?」

見たことの無い初めての状況だった。

普通なら少しのアイコンと素っ気ない壁紙だが今回は違った。

「あっ、マスター!はじめまして」

画面奥から迫ってきて顔だけが写し出されると、片目を閉じてウインクしてきた。

「見えてますか?」

慌てて電源ケーブルを引き抜いた。

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