第3話 黒の城

「お嬢様、着きました。どうぞ」

「ありゃーとー」

ダンディおじさまに手を差し伸べられ、馬車から降りさせてもらう。

見上げると見えたのは、黒い城だった。

「これがまとー?」

「そうです。我々はここから先に入ることを許可されてませんので、魔塔側の者が来たら失礼させていただきます」

「ん。まとーの人はいつ来るの?」

「…今、来ましたよ。アスタシャドラ家のエプランシェ様で間違いありませんね。」

目の前にいきなり人が現れた…!この人もまた、全身黒だ。まだ二十代ほどに見えるのに、金色の目が、王様のような黒豹を想い浮かばせる。

「…こ、こちら、エプランシェ様のお手荷物でございます」

メイドちゃんも、威圧に圧倒されていた。プルプルと震えている。

「はい、確かに。ではもうお帰りいただいて結構です。エプランシェ様、参りましょう」

黒豹くんは、静かにそういうと、ふわっと浮いた。私を抱えて。それも、お姫様抱っこで。


「あ、う、このまま、とぶんです?」

「そうです。大丈夫、絶対落としませんから。怖かったら上を見ていてください。」

そういう問題じゃない、と思わず言おうと思ったときには城のてっぺん付近に来ていて、ひゅっと飲み込まざるを得なかった。

とん、と黒豹くんが降りたところは、バルコニーのようなところだ。だが扉は城門のようで、ここは魔導師用の扉だとわかる。門兵に黒豹くんがちらっと目配せすると、慌てて門が開かれた。さすが黒豹くん。見た目だけじゃなくて魔塔での地位も上なのだろう。


「すごい…」

「そうですか?そう言ってもらえて嬉しいです。今から魔塔の主人に会って貰いますが、リラックスしてくださいね。」

「まとーのあるじ…!」

「魔塔の主人は僕より全然すごいですよ。こう、バシッと…」

黒豹くんとの会話は結構弾んだ。魔導師から聞く魔法の話なんて私にとってはご褒美中のご褒美なのだ。

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