第2話 魔塔に行く馬車

かれこれ数日後。私は魔塔に向かう馬車の中に居た。朝目覚めたら一張羅に着替えさせられてて、すごいかわいいメイド服女の子に膝枕されていた。

突っ込みどころありすぎなの!このまえまで多分大人だったのに、着替えさせられて、自分より若い女の子に膝枕って、え?犯罪では?

恥ずかしすぎて身をよじって自分で起きようとするが、そうはさせませんよとメイドちゃんが起こしてくれる。メイドちゃん、怖し。


「おはよう…」

そういえばあれから、頑張ればある程度は話せることに気づき、拙いながらも会話ができていた。声にならないと思ってた自分、恥ずかしい。

「あ、エプランシェ様。おはようございます。よくお眠りになりましたか?」

「ん…、きもちよかたーよ」

エプランシェとは私の名前だ。正式には、アスタシャドラ・エプランシェ。こんなゴージャスな、と思っていたら、本当にアスタシャドラ家はこの国の公爵家らしい。

魔塔に行く公爵令嬢。これだけで話が書けそうだ。もしエプランシェがこの話の主人公なら、イケメンはいつ出てくるんだろう。従者も今はダンディなおじさまだけど、さすがに転生ファンタジーでおじさまが恋人になるのは見たことない。いつも従者は美少年であるという決まりなのだ。


「お嬢様、朝食が無かったので空腹ではないですか?簡単なものを持って参りましたので、お召し上がりください」

ダンディなおじさま従者は、すいっと私に紅茶と私の子供サイズの口でも食べられるバーガーを出してきた。どちらもお皿は陶器だ。…いや、簡単じゃなくない?

陶器のお皿を持ってきて、あったかい紅茶とバーガーをつくるのは、馬車の中でできることじゃない。…普通の人間なら。そう、魔法だ。


「まほー…!」

「…お嬢様は本当に魔法がお好きですね。今から行く魔塔に行けば、毎日すごい魔法が見れますよ。いつでもあつあつにできますから、ゆっくり食べてくださいね」

「うん…!」


魔塔に着くまで、あと少し。

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