転生したら耐性ができた件

Fuwarena

第1話 転生だけどなんか違う

…思い出せない。

そう言おうとしてぐっと留まったのは、まだ5歳にも満たないほどの小さな少女だった。

外国でもなさそうな、宝石のような瞳、白髪ではなくはっきりと白銀シルバーとわかる髪。

思い出せない。どうしてこんな可愛い女の子になっちゃったのか、そしておそらく転生しちゃったのか。それに、前世の私自身の記憶が全然無いのも、怖い。

前世で覚えてることといえば、作家だったことと唯一ヒットした作品の内容だけだ。


絶対、その作品と関係あるやつ…!


前世の職業柄、直感で思いつき叫ぼうとするが、あう、という声が漏れるだけだった。

シーンと静まり帰るなか、私のあう、が響く…と思ったのだが。

「…仕方ないな」

低いおじさんの声であうはかき消された。

なにが?ていうか人いたの?疑問は湧いてくるが、絶対に言葉になることはないので、諦めて声の主を探すことにする。

とにかく威圧感がある男の人だった。それに、さっき鏡で見た私の色彩と、全く同じだ。

もしやもしかしてお父さん?待って待って、知らない人を簡単にお父さんとは認められないんですけど!と叫ぶが、もちろんあう、リピートである。


「この子は、魔塔に行かせる。」

魔塔。その言葉を聞いて、私はぐらついた。この人がお父さんでもいいかな…。

魔塔と言ったら、魔塔の主さえ攻略できれば優しいところだ。いやそれより魔力とか、私あったりしちゃうの?

魔法、魔塔、魔導師。元作家としては、ドキドキが止まるわけない。

「この魔力量は危険だ。常に魔力を補給させる必要がある。そのためには、魔塔が一番だ」

…この人、お父さんだ。

転生してしまったものはしょうがない。作家としてこの話を読み解いて、お父さんに甘えまくって、魔塔の主攻略して、充実ライフを満喫をしてやる、と決意した瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る