第3話:姉の信念
あさぎりから教えられたおじ様が隠れているアジトの場所。
「おじ様が身を隠しているアジトはとある農業地帯にある廃工場なの」
「廃工場? てか農地って、おいおいそれって……」
そう彼女に問い質す中で思わず、俺の頭の中にヤバいイメージが浮かんでしまう。
「あなたの想像どおりよ。表は農業倉庫。だけど中では違法に金属加工などの工場業務の為に使われていたらしいわ」
「やばいなそこ」
「ええ、これもバブル時代からの流れよ。とりあえずそこにおじ様がいるの。それと建物はダミーだからよく中を調べると良いわ」
なるほど、アジトというだけあってそこらのセキュリティーはしっかりしているらしい。玉座の裏を調べたら階段があったりして。
「悪い物を隠すならば。木を隠すならば森の中。まさに皮肉な話しだな。とりあえずそこで伸びてるゆうだちを安全な場所に連れて行ってやれ。なるべく病院に行った方が無難かもしれんな」
「ええ、そのつもりで考えさせてもらうわ」
「ああ、それと。今後のことだが俺を助けるために来なくてもいい」
「えっ、どうして?」
「さっきの事があったばかりだろう。……それにお前は変身が出来ないからな」
「…………」
俺のひと言にグッとした何か重い物を感じたのだろう。彼女は唇を噛みしめて押し黙ってしまった。
「気持ちはありがたい。だが、それでもあさぎりの助けは要らない。これは俺自身の問題だ。よく分からないが胸騒ぎがするんだ」
「胸騒ぎ?」
「ああ、そうだ。これまで起きた出来事を思い出して考えてみるとどうしても引っかかってしまう事があるんだ」
その疑問対する確証を得る為には俺自身が赴かなければならない。
それを旨に、俺はそのニュアンスを含めてあさぎりに伝える。
それを受けて彼女は少し考え込む仕草をして。
「乾沢くん」
「なんだ?」
「これ。あなたに渡しておくわ」
彼女は胸元のポケットから一枚のメダルを差し出してきた。
「これは……なんだ?」
それは直径一センチ程のメタリックブルーで塗装されたメダルだった。
表面にはローマ字でグロリアスミストと刻まれている。
「これは私の力が封じ込められた特別なメダルよ。あなたが私の力を必要とする時。そのメダルを使うのよ」
「これをか? どうやって?」
俺はそのメダルを受け取りながら彼女に使い方を聞いてみた。
「私に聞かれても使い方は分らないわ。ただ、私が知っている事を話しただけよ」
「どこでそんな情報を仕入れたんだよ?」
「ふふっ、それは女の秘密ってところかしら」
そう、イタズラな笑みを浮かべて言葉を返されてしまった。
「ますます訳分んねぇ……」
とりあえず俺は貰ったメダルをズボンのポケットの中にしまう。
ふと、
「ん……?」
その時。俺に不思議な事が起こった。
それはほんの一瞬のことで頭の中が真っ白になり、そのままピリッとした静電気のような電流が体中に駆け巡って、そして不思議な事に俺はメダルの使い方をマスターしていたのだ。
「……なるほど。変身した直後にこいつが使えるんだな」
ボソッと彼女に聞こえないように独り言を呟く。
「乾沢くん。……頼んだわよ。私の好きなおじ様は。もう私の愛するおじ様じゃなくなってしまったわ……。悲しいけどこれは現実なのよね……。あなたの妹さんを手にした直後からね。あの人は変わってしまったの……」
「そいつがふゆづきを連れ去るように仕組んだわけなんだな……クソッ!」
ふと、
「……一発殴ってきて頂戴」
「はっ?」
「妹をこんな目にあわせたあの男を懲らしめて欲しいの! そしてあの人を止めて! あの人。いえ、あの人と関わっている人達をあなたの力で懲らしめて頂戴!!」
その言葉に、俺はあさぎりの抱える心からの悲しみを感じ取ったのだった。
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