ー「3」

 今日、ミヨが以前居た、銘酒屋の井戸の底から白骨化した死体が見つかった。

 十二歳位の少女の遺骨である。

 七年前に亡くなったと検討が付いている。然し七年も経ったので、もう身元は解らないそうだ。

 ミヨに出会った時の体つきに何処か似ていて、苦しくなる。

 ミヨがこんな死に方をしていたらと思うと苦しくなる。


 今日はミヨの演劇の同僚に会いに行く。


 「ああ。岩原ミヨ子ね。

 あんな不細工の割には演技は上手だったと思うわ。まあ、不細工の割には、ね。不細工だから、どんなに演技が上手くても売れないのよ。可哀想に。

 私みたいに顔が良くて演技が上手だったら良かったのにねぇ。ほんと。

 あっ、まさかあなたミヨ子と同居してる男ね。

 ミヨ子、よく話していたわ。

 不細工の癖に、男が出来たなんてあの時は本当に悔しくて仕方なかったわ。

 ねえ、お兄さん。そういえばあなた、東京大学の学生さんだったのよね。折角此処に来たんだから今度は私と一緒に住んでよ。

 ミヨ子より良くしてあげるわ。」

 「僕はミヨ子の遺書を預かっているんだ。

 そして君の様なミヨ子を貶す人とは一緒に暮らせないよ。

 失礼したね。お暇するよ。」


 ミヨ子の同僚がどうミヨ子を扱っていたか検討がつく。

 

 ミヨ子が演劇を楽しんでいる姿がちらつく。

 頬を林檎の様にして、微笑んだ、あの姿を。


 

 

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檜木 ひなた @hyouka_

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