第4話 幕間・ニチアサのヒーロー

 日曜日の朝は子供達以外家には誰もいなかった。


 両親はいつも日曜日が忙しく昼にならないと帰ってこない。

 レースのカーテン越しに明るい朝の光が差しこんでいて、部屋にはまだ朝食に食べた目玉焼きとベーグルの幸せな香りがしていた。

 子供達は肩を並べて、大好きなヒーロー番組を見ていた。


 お父さんによると、お父さんが生まれる前から日曜日のこの時間には必ずヒーローの番組をやっていたらしい。


「へえ〜、今のは魔法を使って戦うのか」

 なんだか嬉しそうにそう言って、珍しく一緒に番組を観られた時にそう言っていた。

 今日もグレーダーは魔法を使って悪のマジューをなぎ倒す。

 グレーダーは普段普通の人と変わらないが、ひとたび悪のマジューと戦うときは魔法をバリバリ使ってかっこよく活躍する。


「魔法使いってすごいね!」

「うん」

 しかし、グレーダーは本で読んだ魔法使いとは似ても似つかない姿なのが引っかかっていたのでそう言うと、隣で見ていたその子は身を乗り出した。


「本物は違うんだ、どんなの!?」

「黒くて大きなマントをつけてて」

「グレーダーもつけてる」


 小さな指が示したテレビヒーローは漆黒のマントを翻し、ビルの屋上へ身軽に飛び移ったところだった。

 カッコ良い形に広がったマントの下は赤い金属質の鎧のようなものに全身覆われている。


 子供達は時間を止められたように見入ってからやっと話を続けた。


「魔法使いは…黒いつばのある尖った帽子をかぶってる」

「そっか、そこは違うなぁ…」

「今度本を見せてあげる」

 約束すると、嬉しそうに笑った。


 グレーダーは子供達の願いを護るために戦うヒーローで、そこがすごくかっこいいのだ。

 悪のマジューは悪い奴に取り憑いて願いを横取りしたり人を殺しさえする。


「いい魔法使いは、みんなの願いを叶えてくれる」

「カッコいい!」

「うん…本当にいたらいいな」

「だよね」

 子供達の幸せな朝はゆっくり過ぎていった。

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