カースト争い14
ーーそして授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。そして俺が先に腰を上げる。
「じゃあ先行くからな」
「あ、待って。‥‥ありがとう。少しは助かった‥‥かも」
大泉は照れ臭そうに顔を隠しながら、頬を赤くして言った。その表情がギャルゲーヒロインの定番のツンデレみたいだった。
教室に入ると、休み時間にも関わらずみんなの視線が俺を向いた。こう言った視線は懐かしい。中学の頃はこんな目でしか見られていなかったな‥‥。
大泉の机は元に戻っていた。流石に先生に見られるのはまずいと思ったのだろうか?
「おっはー! 楽どこに行ってたんだよ!」
この最近の異様な空気を払拭しようとしているのか、黒須が俺の元にすぐに駆け寄ってくる。考えれば黒須もある意味での被害者みたいなものなのだ。どっちについたとか言う訳ではないが、結果的にはきまづい立ち位置に立たされているのだ。
「ちょっと、お腹が治ってなくてさ‥‥」
「まじかよ! 大丈夫なのか!?」
「もう大丈夫だよ」
赤羽と練馬は何かを楽しそうに話している。赤羽は最近、練馬の悪口を言っていたと言っていたが、それでもあの様に仲良く話せる事が男の俺には不思議でならない。
俺は居心地の悪い中、他に居場所もなく自分の席に座る。
「‥‥楽君。大泉さん見つかったの? ‥‥心配して追いかけたんでしょ?」
暗那が他の誰にも聞かれないような声で、俺に聞いてくる。さっきは何も伝えていなかったが、あの大泉の机を見て察したのだろう。
「見つけたよ。サンキューな暗那」
「良かった。‥‥楽君、大泉さんは犯人じゃないかもって言ってたよね? それって本当の犯人を見つけようとしてるの?」
「うん。そう思ってる。さっき考えたけど、大泉は暗那と李梨奈に嫌がらせをする理由がない」
暗那は真っ直ぐに俺の目を見て、手を掴んできた。
「それ、あたしにも手伝わせて」
「まじか、めっちゃ助かる。暗那に頼みたい事があったんだよ」
犯人はほぼあいつで間違いない。ただそれにはなんの証拠もないのだ。それこそ俺の勘違いの可能性すらある。その為、俺はカマをかける事にした。
決行は明日。もし違ったら許してくれるまで、土下座でもするしかないだろうな‥‥。
そうして今度は大泉が入ってくる。警戒しているのか、その挙動はオロオロとしている。
しかし赤羽や練馬は一切興味がないように、大泉の方を見ていない。そして今日も一日大泉は、昨日と同じように一人ぼっちで過ごした。
翌日。俺はいつもよりも早く学校に登校する。いくつか目的はあるが、その一つは大泉への嫌がらせを防ぐ事。
昨日の朝、机の上をあのようにするには時間が必要だった筈だ。そうなると赤羽か、練馬かどちらかが今日も同じような事をやることは予想できる。
昨日の時点で大泉には上履きは持って帰るように言っておいた。流石に下駄箱までは俺も気が回らないからな。
朝イチで家を出たせいか、教室にはまだ誰もいなかった。早朝の教室というのもなんだか不思議な感じがして悪くない。
「あー、眠い」
教室はとても静かで、眠くなってくる。
そして二番目に登校して来たのは練馬だった。彼女は俺が既にいる事に驚いたのか、教室に入る前に立ち止まった。
「‥‥青春、登校早くないかな? 何かあるの?」
「別に。ちょっといつもより早く起きただけだよ」
俺はこれから、とてもらしくない事をする。もし失敗すればきっと陽キャラ生活は終わる。これは間違いない。
折角、三鶴城が見逃してくれたのにそれを不意にする事になれば、あいつはなんていうのだろうか。普通にバカと言って笑いそうな気がする‥‥。
練馬は席についた後、俺の方をチラチラと見ている。そんなに俺の事が気になるのだろうか?
‥‥それにしてもきまづい。いつまでもこうしていると誰かが登校してくるかも分からない。
ーーそろそろ始めるか。
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