七十三話 『オルタナティブ』の創造神
「「「「……」」」」
本当の意味で本気を出すことを決めた僕を、ツールたちがそれぞれらしい、けれど一様に信頼を込めた眼で見ている。
「それで? どうするのですか……?」
さっきからの冷笑を崩していない
「実際どうするんだい?」
小さな声で聞いてくるゴーストに、自信を込めた微笑を向ける。
「どうもこうもない、ここからは本当の創造神として相手だ」
「創造神としてって……。テスト君は、最初っから開発者だろう?」
戸惑うゴーストの言葉に対して首を左右に振って否定する。ゴーストも秋吉一も思い違い、いや、過大評価をしている。『オルタナティブ』の創造神シンティーネとは
そう、ここにいる皆と、僕だ。
「これが終わったら、ぜひマーマルの美しい港をご主人様にご案内したいですワ」
「ああ、皆でいこうな」
優しく僕を見るマレの身体が、その瞳と同じ青色の光へと変じていき、僕を包んで優美な装飾の鎧となる。
「っ!?」
「何をしようと……」
ゴーストは驚き、秋吉一はようやく真顔になった。向こうとしては妨害したいところだろうけど、さっきあいつがバカにしたゲーム内の能力差は歴然としているから、不用意に近づくこともできないだろう。現に秋吉一は玉座の前でただ立ってこちらを見るだけだ。
「大丈夫、あるじなら勝てる。必勝祈願」
「僕が気付かないようなことに対してのサポートは任せた」
この状況でも冷静さが揺るがないデータムは、黒色の光を経てシンプルでありながら機能的なデザインの兜となって僕の頭を覆う。
「オレの……いや、この世界の分まで、ぶん殴ってやれ」
「おう」
小手に覆われた拳を握りしめて掲げてみせるジオには、こちらも気合いを存分に込めて簡潔に返す。荒々しくもしっかりとした大地を思わせる茶色の光となったジオは、重厚な盾となって左腕に収まる。
「マスター、何があってもアタシたちは一緒にいるからね」
「ここまで付いてきてくれてありがとうな。これからも頼む」
ショートの赤髪を揺らして微笑むソルに、しっかりと言葉で感謝を伝える。思えば何もわからない状況で最初に合流したソルは、常に一番の味方でいてくれた。太陽のような暖かい橙色の光から形成されたのはロングソード。そのデザインははっきりと見覚えがある、僕がファストガで作ってソルが使っていたあのロングソードだ。
「テスト君……本当にもう時間がないみたいだ。レボテックの防壁はもうほぼ破られて、『オルタナティブ』のデータは世界中に拡散しようとしてる。今は親父の仕込んだウイルスを管理権限を持つ本人ごとここに食い止めてるから時間稼ぎはできてるけど――」
「大丈夫、準備はできた」
言い募るゴーストの言葉を遮って、完全武装となった僕は謁見室の中央へと歩を進めていく。黙って僕らの準備を待っていた秋吉一は、向こうは向こうで順調に作業を進めていたようだ。
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