空想異界の創造神 ～自作ゲーム世界に迷い込んだ開発者の全方位ハイスペックアバターによる異世界デバッグログ～

六十一話 終盤マップの高確率エンカウント

　蛇族の集落までの道のりは、覚悟していたうえでも大変なものとなっていた。

　「だ、大丈夫かい？」

　「はぁ、はぁ……、ああ。問題ない」

　息を切らす僕らにゴーストが心配そうに声を掛けてくる。この世界での戦闘能力として高いものを持たない彼には後ろからついてきてもらっている。とはいえ、僕にとっての未来である外の世界、黒幕である秋吉（あきよし）一（はじめ）、そして黒い獣の本質であるコンピュータウイルスに関しては詳しい以上、ついてきてもらうしかない。

　「こっんなに、多いとはな」

　黒い獣は倒した端から消え去っていくから死屍累々と言う訳ではないけど、それでも歩いてきた道を振り返って愚痴を漏らすジオの気持ちはよくわかる。ここまで数えきれないほどの真っ黒い姿をした獣を倒してくることになった。

　考えなしにいくなら、もっと効率よく大規模に攻撃して殲滅してくることもできたのだろうけど、誰を巻き込むかもわからない上に、現在位置を高らかに宣伝して行進するのも危険しかない。だから、それこそＲＰＧのごとく歩きながら出会うたびに律義に戦闘をこなしてきていたのだった。

　秋吉一やその取り巻きにはバレている想定で動いているとはいっても、今回は変装もしていないし、少なくとも見た目は人族の集団がこんな魔族領奥地を歩いていればどうやったって怪しまれる。さらに見つかったのが主戦派なら荒事は避けられない。

　「それにしても多いね……、こんなに黒いのがいるなんて」

　「ええ、中々に大変なものですワ」

　ソルとマレの言う通り、人族領では考えられなかったくらいに、この辺りには黒い獣が闊歩している。加えて僕らを狙って送り込まれているかのように、突然と出現するものもいるのだからたまったものではない。

　「君なら、もっとこう、なんとかできるんじゃないかい？」

　「もっとこうって？」

　「創造神とその仲間たちが揃っているんだろ？」

　「……」

　ゴーストからの指摘に思わず黙り込んでしまう。言いたいことはわかる。ゲーム『オルタナティブ』の制作者として、より直接的なシステム干渉ができないのかということだろう。

　「それは……最終手段だ。絶対使わない、とは言わない。けど使いたくはないな」

　「ふぅん、まぁそこは任せるけどさ」

　もっと食い下がられるかとも思ったけど、意外にあっさりと納得された。

　「意外って顔してるね？　ジブンとしては親父を阻止してくれるなら手段なんてなんでもいいさ」

　表情に出てたか……。

　「なぁそれより、もうすぐ蛇族の集落だろ？　ついたらどうするんだ、タイマン申し込んだら受けるような奴ってワケでもねぇんだろ？」

　横からジオが話に入ってくる。それで出てきてくれたら楽だろうけど、そもそもそこにいるかもわからないんだよなぁ。

　「とにかく情報を集めて欲しい。予測分析」

　「あぁ頼むな」

　ついたら衝突にはなるだろうから何か知ってそうな奴を捕まえて尋問、あとは何か文書とかあれば助かるけど……。そう都合よく手掛かりがあるかはわからないけど、データムに頼るしかないか。それか……ゴーストが何かできそうか？

　「うん、それはジブンに任せて欲しい。直接親父に繋がるようなもの……例えば君たちが見たっていう黒い羽とか、そういうのの現物があればきっと追える」

　そこまで言い切るのは頼もしい。それで追えるというのなら、何とかなりそうか。