四十二話 空から天空神、地からは大地神、そして後ろから創造神
ぼこ、ぼこっ、と土が掘り返される音が連続する。
「ねぇ、マスター。もしかして……?」
つっと冷や汗を一筋流しながら、ソルは目線だけをこちらへ向けてきた。そんな彼女へと僕は神妙に頷いて返す。
「もしかするな。一体じゃない」
「「「ギュヂッヂィ!」」」
僕の宣言に応えるかのように響く、可愛くない鳴き声の大合唱。しかしこれだけ黒い姿がうごめくと威圧感がすごいな……。ソルもちょっと気圧されている様子だ。
「問題ねぇなっ! ボスがいて、ソルもオレも一緒にいる。なんも問題ねぇし、負ける道理もねぇ」
力強く、確信に満ちたジオの言葉に、僕もソルも一瞬動きを止めた。
「……。そうだな、その通りだ」
「うんっ」
得体が知れないからなんだ。それを知るために今こうして旅をしている。
強そうだからなんだ、僕の傍らには心強い仲間がいる。
悩むことも、びびることも何もないな。あとはただ……。
「いくぞっ!」
背負っていた槍を引き抜いて構える。
「うぉぉお!」
雄叫びの尾を引いてジオが突撃を開始する。
「太陽よ応えて、ソーラーレイ!」
右手にロングソードを携えたソルが左手を天にかざして高らかに唱える。そして間を空けずに眩い光線が真っ黒い塊へと降り注ぐ。
「ヂ!」
「ィィッ」
二体の黒モグラに直撃してかなりのダメージを負わせる。しかしこれで仕留めきれないようだった。さらに残りの……僕が把握する限りでは十体が、出てきた穴から地中へと隠れて難を逃れている。
「おん、だらぁっ!」
ジオの裂ぱくの気合いに続く、鈍く重い破裂音。それは格闘手甲に包まれた拳打をうけて、二体の黒モグラが吹き飛ばされる音だった。吹き飛んだ黒い塊はそのまま地に落ちる前に空気へ溶けるようにかき消えていく。
「はぁあっ!?」
消えた黒モグラをみて、ジオは目を見開いて驚いている。黒い獣と直接戦うのは初めてだったか。
けど今はその説明より前に、地中へ逃げた奴らだな。
「マスター?」
「うん、任せろ」
油断なく剣を構えるソルに自信をもって答えてから、前方に穂先を向けていた槍を四分の一回転させて石突を地につける。
「どうだっ!」
気合いを込めて適当な範囲に地魔法を発動させる。スキルではないから威力効力の面では心許ないけど、そこら辺の地中をそこそこに揺らす、なんて曖昧で都合のいい芸当は魔法技能の素発動ならではの小技だ。
「「「ヂッヂ!」」」
慌てた様子でちょうど十体の黒モグラが這い出して来る。よほどびっくりしているのか、その姿は隙だらけだ。
「ソーラーレイッ! たぁぁっ」
ソルが再び閃光を降らせてから、ロングソードを振り上げて踏み込む。
「でぇっらぁっ!」
驚きを一旦脇に置いたらしいジオが拳を何度も叩きつけていく。
「一気にいくぞ!」
そして僕も、槍と一体になるように鋭く突進を開始した。
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