四十一話 ゴルゴン北部
ゴルゴンの首都であるゴルードを出てから、僕らは魔族領との国境線へ向けてキタ草原と呼ばれる草原地帯を歩いていた。
「すごかったな……、代表の人たち」
「そうだね……」
思い出して呟くと、ソルもやや疲れた様子で同意する。
「あいつらは、あんなんだから頼りねぇんだよな」
僕らを送り出す時の熱意というか度を越した忠誠心にげんなりしていた僕とソルとは違った部分で、ジオは不満を表明する。「まだまだオレが付いていてやんねぇと……」とかもぶつぶつ言っているし、まぁ相性のいい神と信者ということにしておこう。
ていうか、ゴルードや大地神教会に関して熱心な信仰という設定やエピソードを作った記憶はないから、あの状況はジオ覚醒後に色々とあったっていうことなんだろうな。篤く信仰される神というよりは伝説の総長って雰囲気だったけど、本当何したんだろうこの子は……。
「い、色々と終わってからの話だよっ! 今は、その……、ボスやソルの近くにいるじゃんかよ」
「お、おう」
じっとジオを見て考えを巡らせていたら、急に頬を赤らめてもじもじとされた。
「かわいいねぇ、ジオは」
「からかうんじゃねぇっ!」
愛おしそうに小柄なジオの頭頂を撫で始めたソルの手を、わかりやすく照れたジオは乱暴な動作で払いのける。それもまた可愛い動作だったために、ソルは余計に頬のにやつきを深めている。
「二人共気が抜けてんじゃねぇかっ!? オレらは見た目はヒューマンなんだし魔族領に入るなら気を引き締めて――」
「いや索敵ならさっきから定期的にしてるけど……、あ」
ぽこぽこと僕のお腹辺りを叩いていたジオの動きが止まる。
「獣?」
ソルが油断なく構えながら聞いてくる。
「ああ、それも黒い方……だ」
僕が前方に視線を据えるのをみて、ジオも慌てて前へでて格闘手甲に覆われた拳を握っている。
いい加減気配も覚えてきた。ただでかいだけじゃない、腹の底に溜まる憂鬱感みたいな暗い雰囲気。悪意と敵意を絶望感に溶かし込んだような嫌な感じ。それが前方少し離れた位置の地中からしている。
「ギュヂィィッ!」
こちらが構えるのを感じ取って奇襲を諦めたのか、大きな黒い塊が地表の土を吹き飛ばして姿を現した。
普通のウシくらいある大きさの真っ黒い図体に、小さくて目立たない目、そして全てが黒いながらもそこだけ光沢を放つ鋭く凶悪な前脚の黒爪。それは巨大な黒モグラだった。
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