三十六話 熱情の大地神

 柔らかで優し気なルックスから差し向けられる、勝ち気で刺し貫く様な強い目線。それは僕の顔面を直撃して、その向こうまで見通すかのようだ。

 

 「そうだよっ、そっちは……ソル、か?」

 「うん!」

 

 僕もそうだけど、ツール同士もお互いの“外見”は把握できていない。その状況で一発で当てたことに、ソルも嬉しそうな反応を示した。

 

 「そっか、あえてうれしいよ。けどよく僕らの居場所がわかったね」

 

 ようやく状況を飲み込んで、安心感と嬉しさから僕も笑顔になる。とはいえ、連絡を取り合っていた訳でもないのに、本当によく探し当てたものだ。

 

 「教会の連中から国境門での話を聞いてね、ショキノ王国から入ってきたんならきっとこっちへ向かってるんだろうって当たりをつけたんだよ」

 「なるほど、つまり半ばは当てずっぽうか」

 

 苦笑がでるけど、合理的といえなくもない。そういえば国境門の衛兵が弾丸郵便を飛ばしていたな。

 

 それにしてもジオのこの元気な性質は僕の勝手にイメージしていた姿とよく重なる。だけど外見は、正直ちょっと意外というかギャップを感じさせる姿だ。

 

 元気で太陽のように明るいソルは、ベリーショートの赤髪に健康的な浅黒い肌、加えて鍛え上げられたスレンダーなスタイルも相まって心身ともに元気少女って印象。

 

 だけどジオはこの溌溂としつつもどこか余裕を感じさせる内面は正にマグマを内包する大地のような印象だけど、見た目はさらりとしたストレートロングの茶髪が麗しいお嬢様としか見えない。身長も低くて、勝ち気な目つきがなければ思わず守ってあげたくなるようなタイプですらある。

 

 けどこのギャップも含めて無条件で親近感と愛おしさを感じるのは、ソルの時と同じだ。きっと彼女らが僕を無条件で主と慕ってくれるのと同じく、僕からしても彼女らは無条件で仲間なんだろうな。

 

 「覚醒してから色々と探らせてたんだけど、やっ……と、会えたな!」

 

 “やっと”にものすごく力を込めてジオは嬉しそうに破顔する。

 

 「その言い様だと、ジオの方もこっちと状況は同じか」

 「ん? 同じ? オレはあれだよ、ジオ・トゥールとしてゴルードにある大地神教会で祀られてたんだけど、この間急にジオ・ツールとしての自分に目覚めてな。で、近くに他のツールもボスもいないもんだから慌ててたってワケだ」

 「うん、アタシもマスターも同じだよー。本当に会えてよかった」

 

 どこかほっとした様子でもあるジオに、ソルもにこにこと機嫌が良さそうだ。モータの一件で僕らの心中にささったトゲが抜けた訳ではないけど、それでもこの仲間との合流は心を暖かくしてくれた。

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