第11話 感動の再会と言うには虫唾が走る
寒く凍えそうな夜だった。
いつしか、囚われていたUGNの施設から解放されてからと言うものの
四六時中、居なくなった片割れの事を考えていた。
アイツは今どこで何をしているのだろう
別の施設に移動したと聞いた、寂しくて震えていないだろうか
酷いことをされていないだろうか
この数年間、マイナス思考に陥りかけていた。
〇月〇×日 20:03
「陽太…だな?えっと…覚えてるか?」
片割れの声が聞こえた。
忘れたことは―恐らく―無い
「忘れるわけ…無いだろ……雪翔」
神崎 雪翔
18歳の時に何処かへ消えてしまった双子の兄だ。
「はは、よかった!忘れられていたらどうしようかと思った!」
「……雪翔」
感動の再会とでもいうべきなのだろうか。
今まで張りつめていた気が少し抜けた。
――しかし妙に違和感を感じる――
「と言うか、今まで何処に居たんだ?探すのに苦労したんだぞ?」
「―――え?」
――違和感の正体は、何処だ――
「UGNに居ると思ったら籍を置いていない。俺はてっきりUGNに居るものだとばかり思っていたんだがな」
――俺が、UGNに、居ると思っていた?――
「だが、先日ようやく見つけた!!見てくれたな?依頼書」
「あ……あぁ……」
俺は鳴海から預かった依頼書を雪翔へ見せた。
「そもそもこんな廃校に本来なら人が来るはずがないからな。見て無ければお前は来なかったわけだが――思った通り来てくれて嬉しいよ、陽太」
――まだ確信が持てない――
「今までずっと心配だったんだ」
――だが、1つだけ言えることがある――
「雪翔……お前は―――UGNの人間では無いな?」
「!?」
俺は全てのUGNの人間と親しいわけでは無い。
しかし、鳴海の様に親しくしている知人はいくらか居る。
友人は勿論、UGNの支部長ですら――俺が雪翔を探していることを知っている。
今日の昼、鳴海と話した時 手がかりはあったかと言われた。
「もしも雪翔がUGNに居るのであれば、知らない支部だろうとトップは知ってるはずなんだ、居ると知れば情報が少なからず流れてくるはずだ。
けど――今の今まで誰も雪翔の存在を認知していなかったのはどういうことだ?」
「…」
「それに心配したって……?どの口が言うんだ?
あの施設からいなくなったのはお前なんだよ、雪翔
そっくりそのまま返してやる。今までずっと心配だったんだ」
「改めて聞く
お前はUGNの人間じゃないな?」
こんなに沢山、喋ったのはいつ以来だろうか
こんなに、感情的に喋ったのはいつ以来だろうか
感情的になる時は、いつも雪翔のことばかりだった。
俺の姿を見た雪翔は、笑顔ではあったものの
次第に片手で顔を覆い
「……ハハハ、そこまでわかったのか。昔の陽太では考えられなかったな」
それでも尚、笑い続けた。
雪翔は笑顔を崩すことは無く、俺に微笑みかけ続けている。
「俺は、どこに所属していると思う?」
「出来れば俺と同じ、イリーガルだと嬉しいんだけどな。でも…所属先を俺に確認してくるんだ。
となれば、FHしかないだろ」
雪翔は
「正解」
よくできましたと、拍手をした。
笑顔は絶やさず。
しかし俺は、途端に冷めた。
「帰る」
「えっ?!ちょ、まって!待った!!!!帰る??!」
後ろを向き、学校から出ていく俺の手を雪翔が掴む。
「帰る」
「俺、お前を迎えに来たんだよ?!」
「帰る」
「あ!俺と一緒にか!」
「俺1人の家に帰る!!!」
「何故だ!!!!」
「FHは、滅ぼさなきゃいけない」
「は――」
「わかってくれよ、俺はFHを、滅ぼさなきゃいけないんだ。そう、刻まれてるんだよ
頼むから、これ以上、俺をおかしくしないでくれ
お前まで嫌いになってしまったら、俺は俺を保てなくなるんだ。」
「よう…た…」
冷静でいようと思った。
何となく、そんな気はしていた。
雪翔はFHの人間か、ジャームになっているだろうと
的中して欲しくなかったことが的中してしまった。
――背けていたのに――
「ここであったことは忘れる。お前がFHであり続ける限り俺はお前を認められない」
雪翔は黙り込み、顎に手を添えて考えている。
冷静に雪翔の顔を見る。
俺と二卵性双生児ではあるが、ほぼ同じ顔。
髪の色や服の色は対照的だが
どこか同じな双子の片割れ。
ひと目見れば雪翔だと分かるのだが
雪翔をFHの人間だと認識してしまった瞬間
彼の顔を見るたび脳内でノイズが走るのだ、
――FHは壊すべきだと――
「…そうか。なら…俺がそんな妄想…忘れさせてやる」
「え」
「待ってろ陽太!!!!また今度会いにくる!!!!その時を楽しみにしていてくれ!!!!」
「ま、待て俺は一言も」
「決まりだな!!!!ではまた会おう!!!!っと、お金はちゃんと渡しておかなきゃな。コレ、今までお前の為に貯めた金だから使うと良い!じゃ!またな!!!!」
「…え、ええ……」
さっきまで肌寒く感じていた夜を吹き飛ばすかのような勢いで雪翔は去っていった。
校舎から先に出ようとしていたのは俺なのに
最後に残ったのは俺だったようだ。
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