第5話 UGNとFH

「UGNとFHは敵対している、と言うことはわかったな?」

「…一応」


「つまり、我々UGNはFHを敵対している」

「…はぁ」


俺がこの施設に来て間もなく、まだ覚醒する前の出来事。

俺は将来の事を見据え、UGNとFHの関係性について勉強をさせられていた。


だが


「……お前、さては勉強が苦手だな?!」


お察しの通り

勉強に関してはてんでダメである。


どうもやる気が起きないのだ

覚えた所で俺はただの人間だしな。

そう思っていたものだ。


最初は研究員の人々も、俺に優しく教えてくれたものだ。

UGNは人々の生活を護る為、一般の人々にはオーヴァードの存在を隠匿している存在で

人とオーヴァードの共存を望んでいる組織らしい。


一方FHはオーヴァード優位な世界を作ることを目的としているテロ組織だと教わった。


俺が覚えられるのはせいぜいこの程度だった。








「まさか物覚えが悪いとは思っていたが、此処までとはな」

「キュマイラは体力がかなり強い方だ。これならあの手が使えるかもしれないぞ?」

「そうだな、反旗を翻す前にサクッとやってしまおう。衝動は恐らく妄想。この衝動を上手く利用すれば行けるはずだ」

「後は手筈通りに」




「No.2954887、今日から担当が変わった」

「よろしく、No.2954887」

「・・・・・」

黒いスーツに黒い髪、金色の瞳の得体のしれない男だ。

見たことが無い人だった。

「さて、覚悟は良いか?君はこれから我々の実験体だ」


得体のしれない機械に縛り付けられ

動きを封じられる。


「な、にを」

「お前の耐久テストだ。強くなりたいんだろう?」

「なら、お望み通り強くしてやろう」

「まっ――――」


動きを封じられているせいでどうすることもできず

ただただ痛みに耐える日々が始まった。


定期的に機械を頭に取り付けられ、をインプットされる。


「FHは敵だ」「FHは滅ぼすべきだ」と

そんな日々がずっと、何日も、何週間も、何年も続いた。




「陽太、やつれてないか…?」

「別に」

「そ、そうか」


双子の兄、雪翔は日々心配してくれる。

昔は雪翔が苦しんでいた時も寄り添っていたものだ。

この施設に居るのも雪翔と共に居るためだった。


だが、最近ではどうでもよくなってしまった。


全部、どうでも良く

己は実験体だ

ただ、■■の為に日々耐えるだけだ。




……何の為だった?




「No.2954887、FHを見かけたらどうするかわかっているな?」

「排除」

「FHの事はどう思う?」

「UGNの敵。だ。」

「ふむ、上出来だ」(やはり常識改善は妄想と相性がいい)


この日は珍しくを任された。

実験体である俺は、普段仕事よりも実験の方を優先させられるが


この時は違った。


「なら、そんなお前に打ってつけの仕事がある。FH残党狩りだ」

「FHの…残党」


その言葉を聞いただけで、虫唾が走る感覚に襲われた。

そしてその憎いFHをこの手で狩れると聞き



心が躍ったものだ。



「No.2954887、ちゃんとできたらご褒美をやろう」

「ご褒美…?必要ないな」

「何だ、要らないのか?」




「だって、今この瞬間が俺にとってのご褒美だよ」





あの日俺は

仕事を完遂させた。

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